俳優なら誰もが夢見るNHK連続テレビ小説(通称“朝ドラ”)。その朝ドラの2017年前期に放送された『ひよっこ』に続き、昨年前期の『らんまん』にも出演を果たした佐久間由衣さん。モデルから俳優へ転向したタレントは数多いる中で、2017年に「コンフィデンスアワード・ドラマ賞」新人賞、2019年には第32回東京国際映画祭で「東京ジェムストーン賞」、エル シネマアワード2019で「エル・ガールライジングスター賞」に選ばれ、俳優としての才能については早くから誰もが認めていた。俳優として確実にステップアップを歩んでいる佐久間さんにとっての転機とは?【第1回/全3回】

佐久間由衣 撮影/冨田望

 

 長身でショートヘア、これまで演じてきた役で印象に残っているのがアクティブなキャラということもあって、どこかボーイッシュなイメージのある佐久間さん。この日は黒のドレッシーな衣装を纏い、大人な女性という雰囲気を醸し出していた。そんな佐久間さんにとっての人生の転換期は、芸能界に身を置く以前にあった。

「高2の時に、たまたま本屋さんに行って文庫本のコーナーで、何を買おうかと思って手に取ったのが太宰治さんの『パンドラの匣』だったんです。パラパラ捲って買おうかどうしようかと悩んでいた時に、すごくハッと思わせる文章に目が留まったんです」

 それは『パンドラの匣』に収録されている長編『正義と微笑』の一節だった。『正義と~』は社会への門出にあたって揺れ動く中学生の内面を日記形式で描かれた物語だ。

「そこに書かれた『人間は十六歳から二十歳までのあいだに形成される』という文章を見た時に“えっ、いまじゃん!”って思ってしまって(笑)。それで、その本を買って読み進めていくうちに、太宰にハマったんです。私にとって、元々、本って勉強するために読むとか、宿題としての課題図書を読むということしかなかったんです。でもこの『正義と微笑』には、人間の暗い部分を包み隠さずに書いてあって、そこの部分に私も当時はまだ青かったので(笑)、色々悩んだりしているのは“自分だけじゃないんだ”という感覚がちょっとあったんです。それで共感できたというか、惹かれて一気に読み始めたって感じでしたね」