1990年代を中心に、バラエティ番組で「バラドル」として人気を博した森口博子さん。まもなくデビュー40周年を迎えるが、朗らかで親しみやすいキャラクターは、いまも幅広い世代に愛されている。
 そんな彼女のキャリアのスタートが、歌手であるのをご存じだろうか。1985年、アニメ『機動戦士Zガンダム』(テレ朝系)のオープニングテーマ『水の星へ愛をこめて』でデビューを飾り、スマッシュヒットを記録。その後も多くのアニソンを歌唱してきた。「機動戦士ガンダム」シリーズの放送開始40周年となった’19年、同曲のセルフカバーが収録されたアルバム『GUNDAM SONGS COVERS』は、第61回日本レコード大賞で企画賞を獲得。今なお愛される名曲でデビューを飾った森口さんを待ち受けていたのは、なんとも過酷な運命だった……。【第1回/全5回】

森口博子 撮影/有坂政晴

『機動戦士Zガンダム』オープニングテーマ曲がヒットするも、突然の“リストラ宣告”

「デビューは17歳のとき、福岡から上京して堀越学園の高校生でした。4歳のとき歌手になると誓ったものの、オーディションを受ければ落選続き……。当時からずっと日記をつけていたんですが、落選した日は“暗闇の中に立っている”と書き出したりして、暗いポエムみたいでしたね(笑)。
 だから『水の星へ愛をこめて』でデビューできたことは本当に嬉しくて。この曲は、アニメ『機動戦士Zガンダム』の力もあってスマッシュヒットを記録したので、“この先、いい歌をもっとたくさんの方に届けるんだ!”と意気込んでいました。
 そんなある日、所属事務所から呼び出され、突然リストラ勧告を受けたんです。目の前が真っ暗になりましたね。“アニメのテーマソングを歌ってそれなりにヒットしたし、もう森口はお役御免だな”みたいな、雰囲気があったんだと思います。
 でも、それは大人の事情。17歳の私には、全く納得できませんでした。一生懸命に仕事を頑張って、その結果がダメならまだ納得できるけど、スタート地点に立ったばかりでスケジュール表も埋まっていなくて、何もしていないも同然でしたから。“私は絶対に福岡に帰りません。辞めません”と泣きながら言ったのをいまも覚えています」