劇場版になると“父と母ってやっぱり強いな”って

 しんちゃんは北村さんにとっては身近な存在であった。

「しんちゃんは5歳で、6~7歳だった子供の僕からしたら、身近に感じられたんですよね。等身大なキャラだったし、当時はしんちゃんに年齢が近いということもあって、“無邪気だな~、しんちゃん”って思う目線では全くなかったんです。むしろ、ひろしとみさえが僕の父母にすごく似ているというか……(笑)。テレビ版ではほのぼのとした日常がすごく心地良かったですね。それが劇場版になると“父と母ってやっぱり強いな”って、子供心に感動を覚える瞬間があったんです。そんなところが北村家と野原家が重なって見えたということもあって。胸に刺さるような“ひろしの名言”もいっぱいあるじゃないですか。それがしんちゃんを好きになったきっかけでもありましたね」

 しんちゃんとの出会いは北村さんにとって、家族の絆を再確認できた……ということに繋がった。

「いまはしんちゃん目線ではなくなって、大人目線で観るところがあるんですよね。でも、子供にとってはいつまでも親の存在って変わらないだろうし。きっと、しんちゃんも大人になっても、5歳児のままの部分も多いだろうなって思うんです。そう思えるのは、やっぱり僕も子供の頃から変わらない部分があったりするからなんですけどね。大人になって、父母に会って、お酒も吞めるようになって、そこで話すことは仕事のことばかりかもしれないけど、それでも親に甘えられる部分ってあったりするんですよ。だから、しんちゃんを観ると“そういう存在だよね、家族って”ということを改めて感じられるんです。そんな“家族”が、頭から最後まで詰まっているのが『クレヨンしんちゃん』の良さなんだなって、すごく思います」