よこじまのハンカチをたてじまにーーでお馴染みの手品師・マギー司郎さん。ゆったりとした茨城なまりのしゃべりで振りまく愛嬌が心地よい78歳は、現在も現役真っ只中で舞台に立ち、よこじまをたてじまに変えている。もうすぐ60年目に突入する芸歴の中に、一体どんなTHE CHANGEがあるのだろうか。【第1回/全5回】
取材開始30分前。取材場所である双葉社の応接室に入ると、すでに撮影が始まっていた。
「心配しちゃってね。45分くらい前に着きました。しばらく入口付近の日陰に入ってウロウロしていたら、カメラマンさんが声をかけてくださってね」
そう話すのは、手品師のマギー司郎さん(78)。カメラマンが「もしかして、と思って声をかけたんです。こんなに早く来ていらっしゃるのかとびっくりしました」と続ける。
「だからね、余計な動きをいっぱいしてるの」
ーー余計な動き?
「営業とかあるじゃないですか。僕はね、どこでも早く行きすぎて、そうすると早く着きすぎて疲れちゃうときがあるんですよ。4時間も前に着いたりね。それに、営業場所の◯◯文化会館に数時間前に着いて、安心して近くでお茶を飲んでいるじゃないですか。そうするとギリギリで、“あれ! 今日は◯◯文化会館じゃなくて、◯◯市民ホールだ!”ということに気づく。そういう、せっかちなのと抜けているところがあるの」
あと2年で傘寿。大御所中の大御所だが、芸事に携わる人間として、「遅刻厳禁」が絶対的に刷り込まれている。
「僕は58年くらいやっているんですけど、遅刻したことないし、休んだこともないんです。縁をいただくということは、ありがたいじゃないですか。いつだったか、台風の時期に九州で営業していたことがありました。翌日に、埼玉での敬老会を控えていた日でした」
九州での営業を終え埼玉へ向かおうとしたが、台風の影響により飛行機は欠航、新幹線は運休となった。営業不参加もやむなしな状況だが、マギー司郎さんには「行けない」という選択肢はなかった。