番組をやってみて分かったことは、当事者の方々でも、それぞれ考え方が違うってこと

 放送の翌日、僕とプロデューサーは、編成局長に勝手に番組の方針を変えてしまったことを、お詫びに行ったんだ。すると、「田原さん、もう1回やって」って言われた。視聴率がすごく良かったんだね。そこから朝生が、タブーに挑戦することを、局から正式に認めてもらえたんです。

 他にも、原発問題も取り上げた。推進派と反対派の両方に出演してもらって、それぞれの意見を聞く機会になった。同じように、被差別部落問題も取り上げたことがある。この問題も、テレビで取り上げることは、タブーだった。だからこそ、当事者の方たちに出演をしてもらって話を聞いた。番組をやってみて分かったことは、当事者の方々でも、それぞれ考え方が違うってことだ。番組では当事者同士が大げんかになった。

 こんな番組の司会者なので、僕のプライバシーはゼロだと思っています。隠し事はなく、全部本音で勝負をしなくてはいけないと思っている。僕がこのスタンスなので、パネリストが守りに入って、自分の意見を言い渋っているときがあれば、本人にガンガン言って、本音を引き出そうとしてきた。

 長年、番組を続けることができた理由を考えてみると、僕は才能がないと自認しているから、プライドも、まったくないことが大きいと思う。だから、間違っても恥ずかしいどころか、当然なことだと思っているし、討論で負けても当然だと思っている。余計なこだわりがないことが長年、続けることができた秘訣かもしれない。僕の強みかもしれないね。

 逆にプライドがあると、それを守ろうとして、思い切ったことはできないと思う。自民党がダメだなと思うのは、変なプライドを持っているところですよ。だから自分たちで改革することが難しい。改革っていうのは、今までやってきたことを否定することだから。プライドがあると、それができない。

(つづく)

田原総一朗(たはら そういちろう)
1934年生まれ。滋賀県出身。1960年に早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年に東京12チャンネル(現在のテレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーとなり、87年4月スタートした『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)では、長年、司会を務める。近著に政治事件の真相、重要人物の素顔、社会問題の裏側、マスコミの課題を、自身の激動の半生とともに語り尽くした『全身ジャーナリスト』(集英社)がある。