当時は舞台演出や脚本まで手掛けていた
なぜ石坂さんが? と、いまの世代は疑問が沸くが、石坂さんは劇団四季の創設者のひとりである演出家・浅利慶太さんにスカウトされて1967年に劇団四季に入団。演出部に所属して、演出助手を務めた。その後、両立していた俳優業が多忙を極め、劇団四季を退団したが、1972年ごろまでNHK教育の子供向け番組の脚本を手掛けるなど、舞台演出や脚本執筆経験が豊富。
──そうなんですね。それから約40年たって、夫婦役とは。
「感慨深いですよ。それからずっと会っていませんでしたから」
──ずっとお会いしていなかったんですか!?
「会ってなかったんですよ。今回の『海の沈黙』でも、私は(妻とは)別に相手がいる感じの役ですからね。共演シーンってなかったんですよね」
──小泉さんが奥さま役だと聞いたときは、率直にいかがでしたか?
「月日の流れの恐ろしさを感じましたよ。どうせだったらもっと会うシーンが欲しかったよね」
──せっかくなので、当時の小泉さんの印象をもう少し。
「可哀そうなくらい忙しそうでしたね。だから打ち合わせのためにもらった時間も“寝ていいよ”と言って。そしたら素直に寝てましたね。本当に忙しいし、時間がなかったですから。曲の間のしゃべりの台本も私が書いたんですけど、キョンキョンはビシ! っとやってね、ビックリしましたよ」
そんな縁のあるおふたりだったとは。こちらこそビックリだ。
いしざか・こうじ
1941年6月20日東京都生まれ。慶應大学在学中の1962年にテレビドラマ『七人の刑事』(TBS)でデビューし、卒業後に劇団四季に入団する。TBSテレビのプロデューサー、石井ふく子に見いだされる。NHK大河ドラマに『天と地と』『元禄太平記』『草燃える』3作品で主演。2025年『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』で大河ドラマ12作目の出演が決定している。市川崑監督とのコンビでもよく知られており、特に『犬神家の一族』(1976)の金田一耕助役は高い人気を誇る。近年では倉本聰脚本による主演ドラマ『やすらぎの郷』(テレ朝系)が好評を博した。ほか近年の主な出演作に、ドラマ『相棒』(テレ朝系)シリーズ、『ブラックペアン シーズン2』(TBS系)、映画『変な家』(2024)、最新作に『海の沈黙』。
作品情報
映画『海の沈黙』
原作・脚本:倉本聰
監督:若松節朗
出演:本木雅弘、小泉今日子、清水美砂、仲村トオル、菅野恵、石坂浩二、中井貴一
配給:ハピネットファントム・スタジオ