「10万円で作った会社が9000万円を売り上げたというのは、奇跡としか言いようがないです」

 巷で話題になっているだけなんです。それを聞きつけたテレビ局や新聞が取り上げてくれて、もっと広まったという流れです。ほんと、10万円で作った会社が9000万円を売り上げたというのは、奇跡としか言いようがないです。初版では、1冊8円とかしか利益出てないんですよ。それが重版し続けて、驚異的な売り上げに繋がったんです」

―1人出版社で9万部とは、出版業界としては異例ですね。

「Amazonで少し話題になっている頃に、紀伊国屋書店さんが“これは売れる”と判断してくれたんですよね。その力は大きいです。まあでも、全部自分で発送しているんですけどね(笑)」

 佐々木さんの物語は、1冊の本がいかに大きな変化を起こすかを教えてくれる。1人ひとりの可能性は無限だ、という力強いメッセージを我々に送ってくれる。

■プロフィール
ささき・りょう
昭和59年生。京都精華大学芸術学部卒業。大学時代は油絵を専攻。京都現代美術館の学芸員を経て、現在は瀬戸内の文化芸術の研究を中心に活動。自身で立ち上げた出版社・万葉社から令和4年10月に出版した『愛するよりも愛されたい』がベストセラーに。恋歌を現代奈良弁に超訳し、1300年前の情感を引き立てている同書はSNS風の表現と流行語を駆使し、令和時代にフィットする1冊に。7月21日には第二弾『太子の少年』を刊行予定。