言葉にすることがすごく大事
映画のラストでの加代子のモノローグ
――私は枯れない、私は闘う、満たされないこの悔しさを力に換えて書き続けるんだ。
この言葉は、のんさん自身の生き方に重なっているようにも思える。
「すごく共感するセリフでした。私もやっぱり、いつまでも物事を新鮮に捉えて、自分の中から表現がどんどん出てくる人でいたい……という気持ちがすごく強いんです。だから、加代子が言っているみたいに“枯れない”っていうのは、目指すべきところだと思います。と同時に、ずっと作品を作り続けている堤監督の切実な気持ちが込められているんじゃないかなとも受け取れました」
本作で俳優としてまた新たな引出しをひとつ作った感のあるのんさん。2022年に公開された映画『Ribbon』では主演のみならず、監督、脚本と一人三役を務めた。
「チームを組んで映画を撮っていく中で、自分が撮りたいモノ、自分が映したい色だったりをスタッフの方々に伝えていくことが本当に重要でした。それまでは言葉にしなくても“自分が作ったモノをみてもらえれば良い”“自分が演じた役を楽しんでもらえれば良い”そんな気持ちもあって、自分の個人的な事情は全く関係ないと思っていたんです。でも『Ribbon』を制作する中で、自分を言葉にする……資料を集めて見せるだけじゃなくて、言葉にすることがすごく大事なんだって思いました」
今後は表現者としてどう変化していくのかという部分に興味が惹かれる。
「表現者として成長していきたいです。“自分はもっともっとこの道で良くなっていく”“頂点を極めていく”というのは、一生終わらない道のりだなって思います。生きていく限りどんどん良くなっていくと信じて、天井知らずで上り詰めていきたいと思っています」
死ぬまで表現者──ということなのだろう。比喩としては的確ではないかもしれないが、サメやマグロが泳ぎ続けないと死ぬというように、のんさんも死ぬまで表現し続けないと自身を失う……ということなのか。
「表現出来ていないから、それが直接死につながる……というよりは、単に生活できなくなって野垂れ死ぬ……みたいな感じだと思います(笑)」