“何も言わずにただ聞いている”というのが僕なりのコミュニケーション

 テレビに出ているときの爆笑さんは、エンタメショーとして成立させるために、いかに視聴者を楽しませるかを意識されているように感じるんです。ほんとに面白くてカッコいいんですが、それがラジオになると、小学生のケンカみたいな言い合いを2時間ずっと続ける感じで(笑)。

 面白いのはもちろんですが、そこにはまったく嘘がないように感じたんです。なんだか、自分のためだけにしゃべってくれているような感覚にもなって……。親近感が一気に湧いて、お二人に憧れを抱くようになりました。

 今の僕って、みんながワ〜ッとしゃべっているときに、ひと言も言葉を発していないことが多いので、よく不機嫌なのかと思われることがあるんです。でも、そうやって“何も言わずにただ聞いている”というのが僕なりのコミュニケーションの取り方で、それが心地よかったりもする。そんな他人とは違う自分を肯定できるようになったのは、爆笑さんのラジオに出合えたおかげだと思います。ようやく自分の居場所を見つけられた気がしました。

 そうして、僕は、NSC(吉本総合芸能学院)に入ります。大学に通いながら芸人をやろうとも考えましたが、友人がいない中で大学に通い続けるのはしんどいなと思い、やめました。NSCを卒業後は、相方のもぐらとコンビを結成し、活動を始めます。ただ、仕事はほとんどありませんでした。劇場の出番も月1回のみで、与えられた出演時間もたった2分ほどだったのを覚えています。

 でも、そんな状況下なのに、なぜだか自信だけはあったんです。渋谷の無限大ホールという劇場に来てくれるお客さんは、若い女性が多くて全然ネタはウケませんでしたが、悪いのはお客さんだ、こいつらのせいで俺は上に行けないんだって思うようにしていましたね(笑)。

(つづく)

水川かたまり(みずかわ・かたまり)
1990年7月22日、岡山県生まれ。NSC東京校第17期生として入学し、2012年に鈴木もぐらとお笑いコンビ『空気階段』を結成。『キングオブコント2021』王者。17年から放送しているラジオ番組「空気階段の踊り場」(TBSラジオ)に出演中。22年にはドラマ『君のことだけ見ていたい』(Hulu)の脚本を手掛ける。俳優として『妻、小学生になる』(TBS系)や『罠の戦争』(フジテレビ系)など数々のドラマに出演。

映画『死に損なった男』
構成作家の関谷一平(水川かたまり)は人生に疲弊し、駅のホームから飛び降りようとするが、隣の駅で人身事故が発生。タイミング悪く死に損なった一平の前にその人身事故で死んだ男・森口(正名僕蔵)の幽霊が現れ、ある依頼をする……。

出演:水川かたまり 唐田えりか 喜矢武豊 堀未央奈/正名僕蔵
監督・脚本:田中征爾
2月21日(金)より全国公開
配給:クロックワークス
(c) 2024「死に損なった男」製作委員会
公式サイト https://shinizokomovie.com/