ゴリの芸名で1995年にお笑いコンビ「ガレッジセール」を結成した照屋年之さん。2006年から映画監督のキャリアをスタートし、最新作『かなさんどー』も公開された。彼のTHE CHANGEとはーー。【第2回/全2回】

照屋年之 撮影/貴田茂和

 2007年からは映画監督としても活動しています。芸人50人に短編映画を撮らせる企画が吉本社内で立ち上がって、僕は映画学科出身ということで声がかかりました。面白半分で引き受けたんですけど、いざ始まったら撮影部、照明部、録音部、美術部、演者、全員が「これ、どうしますか?」って聞いてくるんですよ。初めてだから当然答えられないし、撮影もうまく進まない。夜10時にクランクアップの予定が、終わったのは朝5時なんてことも。僕がスタッフでもさすがに腹が立つような地獄の現場でした。「監督なんて二度とやらない」と思ったんですが、編集を始めたら、これが楽しくて楽しくて! 撮ったカットがつながって、頭の中で描いていた映像が具現化していくときの快感がすさまじいんです。そしてそれをお客さんという赤の他人に見せて、狙ったところで笑ってもらえる。その楽しさを追いかけてたら、もう14作です。今では現場でも自分が求めているものを具体的に伝えられるようになりました。

 最新作『かなさんどー』は6年ぶりの長編映画です。伊江島が舞台になっていて、オール沖縄ロケで撮影しました。主人公・美花(松田るか)の父・悟を浅野忠信さんに演じてもらったんですが、最後に悟が泣くシーンがあって、そこでなかなかOKが出せませんでした。 

 浅野さんが感情を高めていって涙が溜まってポロリと落ちる、カット、「違います。もうちょっとこういう泣き方で」「わかりました」って、10回ぐらい繰り返して。現場も「浅野さん、そろそろ怒り出すんじゃない?」ってヤバい空気になってるし、僕も胃が痛くなるくらいキツかった。