トレンディドラマで現代的な女性を演じたかと思えば、姉の恋人を略奪する妹を演じ、さらに看護師長から徳川将軍の乳母、おとり捜査官に近年は母親役も……。俳優・松下由樹さんがこれまでに演じてきた役柄は、あまりに幅広い。1983年に映画『アイコ十六歳』でデビューしてから、今年で42年。さまざまな役に取り組んできた俳優人生、その折々の転機を聞いてみた。【第1回/全3回】

いつも演じている役柄そのままに、柔和な笑顔で受け答えをしてくれた松下由樹さん。しかし、そんな松下さんがドラマ『ディアマイベイビー~私があなたを支配するまで~』(テレ東系)で演じるのは、担当する俳優の森山拓人(野村康太)を狂愛する、芸能事務所のマネージャー・吉川恵子。過剰な愛がじょじょに狂気をはらんでいく、エキセントリックなキャラだ。近年は母親役など、落ち着きのある役が多い松下さんにとって、かなりチャレンジングな試みといえるだろう。
──恵子はキャラ的に入り込みにくい役だと感じました。今回はどのように役作りに取り組んだのでしょうか。
「今回は台本がすでに全部、できあがっていたので、その点ではありがたかったです。自分でイメージするだけでは、どうしても足りなかったんです。
不安に思っている点やイメージしにくい点。あとは物事が起こっている怖さだけをただ見せるのではなく、自分の中で恵子というキャラクターをどう作り上げて、“だからそこに行き着いているんだ”ということ。そのへんは監督さんやプロデューサーさんの意見を聞きながらイメージをふくらませる。そういうやり方をしました」