観ている人を少しでも救ったり助けたりできたら

 その後、ドラマ『最愛』(TBS系)、『女神の教室~リーガル青春白書』(フジテレビ系)などで話題となり、『フェルマーの料理』(TBS系)で連続ドラマ初主演も果たす。この春からはNHK連続テレビ小説『あんぱん』にも出演。今後への思いはまた違う段階に入ったようだ。

「今まで“こういう役者になりたい”とか、“素敵な作品を盛り立てることのできる役者になりたいな”という思いはあったんです。でも、役者という仕事とどういうふうに向き合っていきたいか、みたいな確固たるものがなかった気がします。3月に24歳になったのですが、自分も大人になってきてるんだな、というのは最近感じていて、そういうこともしっかり考えないといけないと、強く思っています」

 その思いは、何を届けるか、どう受け止めてもらうか、というシンプルな思い。

「僕自身、小学生中学生ぐらいのときにケンカものの映画を見て、強くなった気にさせてもらったり、そのときちょっと嫌なことがあっても、作品の中で描かれる壮絶な物語に比べたら、自分なんて、と思えたり、ドラマや映画に力をもらうことがたくさんありました。そういう小さくても大きくても、観ている人を少しでも救ったり助けたりできたらと思うんです。そこをテーマに役者としてやっていきたいなと、ここ最近思うようになりました。
 もちろん、100人に届けたら100通りの感想があると思うので、簡単ではないですが、その中で、“この作品に出会ってよかったな”と一人でも多くの人が思ってくださるい作品を届けたいなと思いますし、そういうところを少しずつですが、考える年齢にもなってきたなと思っています」

 強いまなざしでこれからの役者としての向き合い方について語る高橋さん。最後に日常生活の中の小さな「CHANGE」について聞くと、即答が返ってきた。

「睡眠ですね。睡眠が人生においてとても大切だと思っています。去年、寝具を全部変えたんです。ベッドも枕もカバーも全部。すごく変わりました。睡眠の質が良くなると、時間が短くても疲れが取れますし。以前はけっこう夜遅くまで起きていたのですが、次の日早い日は早めに寝るようになりました」

 何気ない生活の変化も俳優としても変化も、スッと質問に答える明快なスタンス。ドラマや映画、バラエティでも活躍する真摯な姿勢の一端を垣間見た思いがした。

高橋文哉(たかはし・ふみや)
2001年3月12日生まれ。2019年に放送された『仮面ライダーゼロワン』(テレビ朝日系)で主演を務め、20年公開の「劇場版 仮面ライダーゼロワン REAL×TIME」で映画単独初主演を果たす。以後、多くのドラマ、映画に出演し、2023年公開の主演映画『交換ウソ日記』で第47回日本アカデミー賞新人賞を受賞。25年には馳星周の直木賞受賞作を映画化した『少年と犬』(3月20日公開)に西野七瀬とともにW主演し、NHK連続テレビ小説『あんぱん』への出演も発表されている。