年齢を重ねるほどに表現の幅を広げ、さまざまな作品に色を添えるだけでなく、俳優、モデルとしての仕事、キャスターなどまったく違うジャンルへの挑戦を果敢に続けている板谷由夏さん。強さと柔らかさを持ち合わせる板谷さんが大事にしているのは“変化し続けること”。その言葉が持つTHE CHANGEの意味や、いま改めて挑戦するドラマ『いつか、ヒーロー』(ABCテレビ・テレビ朝日系)についてお聞きしました。【第2回/全3回】

どんな役柄も圧倒的な存在感で演じ切る板谷由夏さん。これまでのターニングポイントを聞くと、少し考えながら「どの作品も自分にとっての大きなターニングポイントとなっているんです」と教えてくれた。
「どんな現場でも、どんな作品でも、自分にとっては毎回大きな刺激をもらえる場所になっているんです。でも、一番大きなターニングポイントは何かと考えたときに浮かぶのは、それまでやろうと思っていなかった俳優のお仕事に、声を掛けてもらったことかもしれません」
映画『avec mon mari』が俳優・板谷由夏のはじまり
その作品は、1999年に制作された映画『avec mon mari』。監督である大谷健太郎氏に誘われ出演したことで、彼女の世界は大きく広がった。
「もしあのとき、大谷監督から誘ってもらっていなかったら、いまもお芝居をしていなかったと思うんです。最初は自分にお芝居ができるかどうかの不安はありましたが、大谷監督に“楽しいよ”と言ってもらい、飛び込んでみたら、“こんなに楽しい世界があったなんて!”と驚いて! 本当に小規模な作品だったので、合宿のように昼夜関係なく泊まり込み、みんなで一緒のご飯を食べながら撮影をしました」

「それがまた楽しかったですし、監督がいて、プロデューサーがいて、録音部がいて、撮影部がいて、メイク部があって、衣装部があって、俳優部がいて……。それぞれのプロの集団が集まって、ひとつの作品を作り上げていくことがこんなにも楽しくて、嬉しいことなんだって大きな衝撃を受けたのを覚えています。
結果的に作品はとても良い評価をいただき、私もヨコハマ映画祭の最優秀新人賞を受賞することができて、(俳優という仕事に)一気に夢中になってしまいました」