親友・青山テルマに意を決して打ち明けた

 この話を聞いていた隣のマネージャーが大きくうなずき、スタッフから「病院に行くとなったら、1軒目に行く前にセカンドオピニオンを探している」というエピソードが飛び出し、本人も大爆笑。

「つねにA案だけでなく、B案も持っておきたいんです。というのも、自分の選択に対して、必ずリスクヘッジをするようにしているんですよね。ロサンゼルスに住んだことも、僕が日本でカミングアウトをしたときに、誰も受け入れてくれなかったときのために、比較的LGBTQ+に寛容なロサンゼルスで暮らすという基盤を作っておきたかったんです。この行動力は、僕の最大の長所だと思っています」

 彼が執筆したノンフィクションエッセイ『人生そんなもん』(講談社)には、親友である青山テルマさんとのエピソードも描かれている。

「テルマはお互いにイヤなところも知っているし、いいところも悪いところもわかりきっている、家族のような存在なんです。本当に家族ぐるみで仲が良いですし、姉弟のような感覚なんですよね。実は、カミングアウトの前に僕のすべてを話していたのは、日本ではテルマとLAに住んでいたフォトグラファーの友達、2人だけだったんです。このふたりの存在がいたからこそ、自分を保てていたように思います」

與真司郎 撮影/有坂政晴

 母親にもできていなかったカミングアウトをしようと思ったのは、一体何がきっかけだったのだろうか。

「家族には、ずっと本当のことを話したいと思っていました。でも、決して簡単なことではなかったんです。そんななか、ある日ふと、“自分の家で、僕のパートナーと家族、信頼できるスタッフと友達が一同に集まるホームパーティができたら、どんなにいいだろう”って、思った瞬間があったんです」