エナジーを大きな劇場の一番後ろにまで

 今回の舞台は5月に東京、6月には大阪で上演される。会場は東京が新橋演舞場、大阪は松竹座である。新橋演舞場は歌舞伎をはじめ、松竹新喜劇やコンサートなどが上演される大型の劇場で、地上3階建で客席数は1428。(東京公演は5/16に終了)

「ものすごいプレッシャーです。正直、演舞場の座長が務まるのかなって思いますけど、あまり大きな劇場だということは考えないようにしてます。きっと演目と劇場のバランスというものはあると思うんです。僕は演劇に関しては素人みたいなものなので、僭越ですけど、もしかしたらちょっと大きいのかなっていう気がしたんです。もう少し小さい劇場のほうが熱量が伝わるんじゃないかと。そういう心配はありました。それでもやらせていただこうと思った理由はやっぱり物語の面白さです。やるからには、大きな劇場の一番後ろにまでエナジーを伝えるように頑張るつもりです」

 大きな瞳を輝かせて話す石黒さんの姿からすでに熱量が伝わってきていた。演じる名倉憲太朗は元機動隊の舎監である(ドラマ版では渡哲也が演じていた)。

「学生寮の舎監……舎監という言葉を久しぶりに聞きましたが、管理人さんですよね。名倉は色々と過去を抱えていることもあって若者たちに対して思うところがあるんですが、彼らと過ごすうちに段々と心を通わせていくんです。若者たちとのあいだいに介在する“父性”がひとつのテーマなのかと思っています。俳優としてのテクニカルな部分では、舞台の広さを考えた上で、声のトーンでいうとどのくらいのボリュームでやれば良いのかとか若者たちとの距離間とかをどううまく表現するかがこの芝居での課題ではあります」

 学生たちの中で中心的な振る舞いをする坂下薫平には岡本圭人が扮する。岡本はHey! Say! JUMPの元メンバーで2007年に「滝沢演舞城2007」で初舞台を踏んでから多くの舞台に出演している。2018年に芸能活動を休止し、アメリカの2年制演劇学校「アメリカン・アカデミー・オブ・ドラマティック・アーツ」のニューヨーク校に2年間の留学経験を持つ。
(アメリカン・アカデミー・オブ・ドラマティック・アーツ=1884年に設立。これまで、カーク・ダグラス、ロバート・レッドフォード、アン・ハサウェイ……などの名優を輩出)

 そんな岡本に対しては──

「2年間もニューヨークで演劇を学んでいたというので、演劇論を持ちかけられたらどうしようかと思ってヒヤヒヤしていました(笑)」

 石黒さんが主演する舞台『反乱のボヤージュ』は6月1日から大阪公演が松竹座で上演される。

 俳優としての長きに渡りキャリアを積み、今日の地位を築き上げ石黒さんだが、実は元々は俳優志望ではなかったのだった……。

(つづく)

石黒賢(いしぐろ・けん)
1966年1月31日、東京都生まれ。A型。T178㎝。1983年、テレビドラマ『青が散る』(TBS系)で主演デビュー。以降、『振り返れば奴がいる』、『ショムニ』シリーズ(フジテレビ系)、『ネメシス』(日本テレビ系)、『アイシー~瞬間記憶捜査官・柊班~』(フジテレビ系)などのテレビドラマや『めぞん一刻』、『ホワイトアウト』、『マスカレード・ナイト』、『20歳のソウル』などの映画に出演。またウィンブルドンテニスのスペシャルナビゲーターや絵本『Scary』の翻訳など幅広く活躍。

【作品情報】
舞台『反乱のボヤージュ』
原作: 野沢尚
脚本・演出: 鴻上尚史
出演: 石黒賢、岡本圭人ほか

6月1日(日)初日~8日(日)千穐楽 @大阪・松竹座にて公演
公式サイト: https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/202505_enbujo/