1971年のデビューから55周年。コンサートに舞台公演にと精力的に活動し続けている歌手、研ナオコ。「夏をあきらめて」「かもめはかもめ」「あばよ」ほか、数多くの代表曲を持つ傍ら、タレント業や俳優業での知名度も高く、特にザ・ドリフターズとの共演やレギュラーを務めたバラエティ『カックラキン大放送!!』などで人気を誇ってきた。すっぴんからのメイク動画をアップするなど、有名人が自身のYouTubeチャンネルを成功させた先駆けでもある。老若男女問わず支持されてきた研さん。そのTHE CHANGEとは――。【第1回/全4回】

写真撮影を前にした研さんが、決めポーズを取るでもなく立つ。
「研さんは、黒がすごくお似合いですね」。感想が自然に口をついて出た。
仁王立ちしながら「黒ね、好きなんですよ」と応える研さん。それだけなのに、無性にかっこよくてしびれた。
――ソープ嬢として働く女性・加那(中尾有伽)と認知症の祖母・紀江の交流を描くヒューマンドラマである、映画『うぉっしゅ』が全国公開中です。研さんは、認知症の紀江さんをすっぴんで演じています。本編に登場するセリフ「忘れられているから、忘れてしまうんです」が印象的でした。家族の物語ですが、研さん自身がご家族との関係で“これは大切にしよう”と心がけていることはありますか?
「あのセリフがすべてを物語っていますよね。私は、今はいなくなってしまった、この世を去ってしまった家族のことを、絶対に忘れません。手を合わせる時間が取れないときでも、頭の中には常にあります。それだけは忘れてはいけないと思っているんです」
――そうした考え方は、子どもの頃からですか?
「そうです。おばあちゃんが亡くなったときにね。“おばあちゃん大丈夫だよ。見ててね”って。“もしお家が新しくなることがあったとしても、ここはずっとおばあちゃんの家だからね”と」