同じ夢を持った人たちと会えた!
そんな中にあって、WAGEにはお笑いへの情熱を抱えた人たちが集まっていた。中学1年生の頃、『ダウンタウンのごっつええ感じ』(フジテレビ系)で観たコントに心を奪われて以来、お笑い、ひいては「面白い」ということに魅入られていた岩崎にとって、自分と同じような人と出会うのは初めてだった。「同じ夢を持った人たちと会えた! って喜びはすごくありましたね」と、当時のことを振り返る。サークルでの日々は楽しかった。
「“面白い”を合言葉に集まった人間たちだから、普段の会話でも相手より抜きん出た表現をしたい、ひと味違う着眼点を持ちたい、ってみんなが思ってるんですよ。ネタに関してももちろんそう。あれは青春だったなと思います」
さらにうれしかったのは、サークルの新入生たちが初めてネタを披露する新人ライブの直前に、先輩からかけられた一言だった。「今年の新人ではう大がズバ抜けてるって、みんな言ってるから、自信持ってやったらいいと思うよ」(『難しすぎる世界が僕を鬼才と呼ぶ』より)。ライブに向けた練習を見てくれた先輩たちが、そんなふうに思っていたとは知らなかった。
「そんなこと、それまで一度もなかったんです。むしろ、できると思ってやってみたことが全然できなかったり、自分よりはるかにできる人に圧倒的な力でねじ伏せられたりしてばっかりだった。“こんなうれしいことがあっていいのか!? こんなラッキーなことがあっていいのか!?”って思いました」
習い事でやっていた水泳もピアノもさして上達せず、中学の野球部では万年補欠。人より秀でていることが見当たらなかった人生に光が射す。だが、そこで単純に「じゃあ自分はお笑いの道を歩いていっていいんだ」と思えたかというと、そうではなかった。「正直にいえば、どこか冷静な自分もいましたね」と振り返る。
「“もしダメなんだったら、早く限界を知りたい”って思っていたところはあります。ダメになるなら早めにダメになってくれないと、こっちの人生設計もあるんだぞ、って(笑)。でもダメだとわかるまでは続けていこうと思っていた。お笑いを始めた頃からずっとそういう感覚はつきまとっていたかもしれません。ここ数年はさすがにそんなことはないですけどね」
(つづく)
岩崎う大(いわさき・うだい)
1978年9月18日生まれ。東京都出身。幼少期を湘南で過ごしたあと、西東京市で暮らす。中学3年生から高校までオーストラリアへ移住。高校卒業後、帰国子女として早稲田大学政治経済学部政治学科入学。大学でお笑いサークル「WAGE」に参加、在学中の2001年にプロデビュー。2005年までWAGEとして活動したあと、2006年に槙尾ユウスケと「劇団イワサキマキヲ」を結成。2010年にコンビ名を「かもめんたる」に改名。その後『キングオブコント2013』で優勝。2015年には「劇団かもめんたる」を旗揚げ。2020年と2021年に2年連続で岸田國士戯曲賞に最終ノミネート。現在も芸人、劇作家、脚本家、演出家、漫画家など、多岐にわたり活動中。
■インフォメーション
『かもめんたる岩崎う大のお笑いクロニクル 難しすぎる世界が僕を鬼才と呼ぶ』
著:岩崎う大/発行:扶桑社
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