2013年に『キングオブコント』王者となり、2015年に旗揚げした劇団では岸田國士戯曲賞の最終候補に2度ノミネート、さらに近年は若手芸人の賞レース『ABCお笑いグランプリ』や『UNDER5 AWARD』にて審査員を務める――芸人からもお笑い好きからもその異才にたしかな信頼を寄せられる、かもめんたる・岩崎う大。その半生は、いくたびもの挫折と巡り合いによって前に進んできた。初の自伝的エッセイ『かもめんたる岩崎う大のお笑いクロニクル 難しすぎる世界が僕を鬼才と呼ぶ』(扶桑社)を上梓した岩崎に、人生のTHE CHANGEを聞いた。【第3回/全5回】

お笑いコンビというのは不思議な関係だ。客を笑わせるという目的に向かって力を合わせるのが本分だが、常に2人でひとつであるがために、互いの美点も欠点も嫌と言うほど知ることになる。もともと親しい友人同士だったのが、続けるうちに仲がこじれたりドライな関係になっていったりすることは多い。
かもめんたるも、そんな一組だった。早稲田大学のお笑いサークルの先輩後輩として出会った岩崎う大と槙尾ユウスケが、2007年にコンビを結成。2012年には『キングオブコント』(TBS系)決勝に初めて進出するも「それだけじゃ、生活できるようには全然ならなかったですね」と岩崎は振り返る。2000年代後半に巻き起こったお笑いブームは終わり、若手が世に出るチャンスは限られていた。とにかくネタを作るしかできることはなかったが、かもめんたるの場合、それは100%岩崎の役割だ。ひとり孤独にコントを書き続けていると「なんで自分だけが一生懸命やってるんだ」とストレスは溜まる。
ところが、相方から意外な提案がもたらされたことで状況は変わった。
「槇尾が“バイト代からいくらか出しますよ”と言ってくれたんです。あれはなかなかのアイディアでした」