主演の森田剛とは念願の再共演

 小川絵梨子氏は翻訳作品を数多く手がけ、18年からは新国立劇場の演劇部門芸術監督を務める演出家。伊原は以前から小川氏演出の舞台を熱心に観劇していて、いつか一緒に作品を、と願っていたという。

「“小川さん演出の作品”というだけでも胸が高鳴るのに、主演が昨年の秋に『台風23号』という舞台でご一緒した森田(剛)さん! 前回は同じシーンがそれほど多くなかったんですが、稽古場でお芝居への真摯な取り組み方を拝見し、いつかがっつり共演したいと思っていたんです」

伊原六花 撮影/有坂政晴 ヘアメイク/瀧川里穂 スタイリスト/矢部うらら

 上演作品は、ドイツの劇作家ゲオルク・ビューヒナー(1813〜1837)が遺した未完の戯曲『Woyzeck』。今回の公演では、舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』を手がけた劇作家ジャック・ソーンによる翻案版を髙田曜子氏が翻訳、さらに小川絵梨子氏が上演台本にした。

 今回の『ヴォイツェック』では、森田剛が主人公のヴォイツェックを、伊原はヒロインのマリーを演じる。

「この作品が書かれたのは19世紀で、最初に台本を読んだときは、“令和の日本で生きているわたしとリンクできる部分を探すのは、正直にいって難しいな”と思いました。でも、何度も読んでいるうちに、生きている時代が違うだけで、現代にもマリーやヴォイツェックはいる、と思えるようになっていきました」