いつの時代も美しく前を向き、世の憧れである松雪泰子。だか彼女のように30年以上も第一線で活躍できる表現者でい続けるのは、並大抵ではない。今秋、音楽劇『エノケン』で“昭和の喜劇王”こと榎本健一に寄り添った、二人の妻の生涯を演じる松雪のTHE CHANGEを聞いた。【第3回/全3回】

バブルの残り香ただよう1990年代から、そして現代まで、松雪が演じてきた人物は数知れない。ドラマ『白鳥麗子でございます!』のお嬢様役、33歳で演じた映画『フラガール』では陰を抱えたダンサー平山まどか、『古都』では京都を舞台に正反対の人生を送った双子の姉妹を一人二役で。役者としての引き出しを増やしてきた源のひとつに、自分自身について考える“内観”の習慣があった。
──内観によって、松雪さん自身にはどんな変化が得られるのでしょうか?
「まず演劇的なメソッドも生かして、感情のブロックを壊し精神と身体を分離するというか、肉体を自由にしてみる、というプロセスを踏んでみます。すると自分の中の思わぬところに、変わることを妨げている要素があると気づくんです。
それは例えば人間関係のしがらみだったり、幼少期のトラウマだったりと嫌なものかもしれません。ただ深層で自分を妨げているものを知ることで、より精神的にも負荷がなくなっていくと感じます。“何者であれ”のような、自分を縛りつけようとする思考からも解放されるんです」