「こんな経験が増えれば、ラッキーです」自分自身を内観することで見えてくるもの

──より自由な身体表現が導かれると。ただ、自身の嫌な性格だったり過去だったりといった、ネガティブなものに向き合うこともあると思います。そこに恐れや怖さは感じないのでしょうか?

「怖くはないです。俳優としてさまざまな人物を演じる以上、やはりその人物の深層心理と向き合わなければなりません。役を知りたくてあらためて自分を内観してみると、自分の中にも共鳴するものがあると気づくこともありますし、演じる過程で(役柄から)学ぶこともあります。
 確かに“うわ、こんなに無知だったの”と、自分でもびっくりすることもあります。でも一瞬のことなので、受け入れてしまえば、人して一段ステップを上がれる気がします。こんな経験が増えれば、ラッキーです」

松雪泰子 撮影/有坂政晴 ヘアメイク/中野明海 衣装/舞台衣装

 変わり続けた松雪の人生。私生活でも一人の息子を持つ母であり、作品とその生き様で、世の女性を元気づけてきた。そこには人生への明快なポリシーがあったが、さらに聞いてみた。

──変われることと、ネガティブな内面も受け入れること。現実的にはなかなかできない人も多いのではないでしょうか。

「そうですよね(笑)。見たくないものって誰しもが心の中に持っているかもしれないし……人生を変えてみたくても、“本当にこれでいいんだろうか?”って、恐れがつきまとうと思います。私も経験がありますが、不安に思うからこそ、その恐れや不安を握りしめていた方が都合がいいと感じてしまう場合もあるんです。でもそこで、少し勇気を持ってみてください。世の中は自由で楽しいです」