「自分にとって大事な時期だった」
この『ダディ』を含め、2020年代はさまざまなジャンルの舞台に出演し、その存在感を高めていく。
「自分にとって大事な時期だったと思います。特定のジャンルにこだわらず、面白いと思う作品や人でどんどん出演させてもらいました。自分が選択して、責任を持ってやるという意識がより明確になってきた時期だったかな、と感じています」
この積み重ねが独立の後押しになったのでしょうか?と、うかがうと、「はい!」と力強く返してくれた。
「経験の積み重ねで自信もついたし、もっとやれるという感覚を持つこともできました。調子に乗ってるわけでもなく、自分の中で“この人よりは俺のほうができる”って思うこともあるんです。
本当にそれでできているのかはお客さんが判断することなのでわからないんですけど、そのとき自分がやれる作業として、俺は絶対この人よりもっと多くの作業を同じ期間内でできる、っていう自信もあるし、そういう積み重ねの中で、もっとすごい俳優を見てきたし、近くで勉強させてもらった今があるっていう思いは確実にあります。そういう経験を活かして次の一歩で力を試してみたい、という思いは独立の後押しにはなったと思います」

一方で、デビュー時からのアイドルとしての経験は役者としての武器になっている面もあるのだろうか。
「歌って踊ることを元々やっていたので、それも武器になっていると思います。舞台上って、自分が持っているものの全てを武器にするべきだと思うんですよね。歌や踊りの技術も大事にしながら、役者としても成長していきたい。
実際にはそんなことはないんですけど、たとえば……舞台に出る時に少し具合が悪かったとするじゃないですか。そうしたらその具合の悪さをも利用するべきだと思うんです。ものすごく体がしんどいってなったら、そのコンディションさえも使って作り上げていく。演劇ってそういうものだと思うんですよね。その境地を感じるのが風間さん、白石さん、柴田さんの3人なんです。もちろん具合が悪いっていうのは例えで、実際はそんなことはないんですけど(笑)、でもそれぐらいの境地。すべてを使ってくるという感じですね」