日常の話が生々しくてすごい面白いなと

「昔、『すべらない話』『ごきげんよう』『さんま御殿』のようなトーク番組が好きだったんですよ。日常の話が生々しくてすごい面白いなと聞いてました。今考えれば中には話を盛ったり、ウソを混ぜたりしている人もいたのかもしれないです。でも当時の俺は“本当にこんなに面白い出来事が世の中に起こるんだ!”と興奮してましたね。それで自分が芸人になって何を喋るかとなったら、目が見えてないことははずせないので、その中で起きた面白いことを喋ればいいんじゃないかと自然と考えるようになりました。
 話が脱線したり、違う方向に転がっていったりするのは全然ありやと思うけど、子供のころ理想に描いた芸人像に近づきたいから、本当に起きたことをしゃべって、出来事そのものをねじ曲げることはしたくないなと思ってます。それで今でもこのスタイルをずっと続けてるんでしょうね」

 参考にした芸人も漫談家だった。R-1グランプリ優勝を目標にしていたので、そこで活躍していた芸人のDVDを購入した。あべこうじ、キャプテン渡辺、ユリオカ超特Q。エピソードトークに定評がある兵動大樹の「おしゃべり大好き。」シリーズも買い漁った。

「ピン芸人ではナオユキさんも好きでしたね。起きた出来事を長い尺でしゃべるのではなく、1つ1つの話が短くてすぐにオチがあるんです。1人でこんだけ面白いこと喋れんのや……と憧れました。
 芸人仲間からは落語の影響を受けてそうとよく言われるんですけど、そこは全く通ってないです。お正月の長時間ネタ番組でたまに見ることがあって、『壺算』という噺は好きでした。でも、そこから落語にガッとハマることはなかったです。自分なりに考えてみると、『すべらない話』のおしゃべりが好きだった松本(人志)さんや千原ジュニアさんは、落語の影響を受けていると話されているじゃないですか。その人たちの話をよく聞いていたから、間接的な影響は受けていたのかもしれません」

 落語はひとり喋りだが、厳然たるフィクションの世界だ。それよりもノンフィクション性の高い漫談に惹かれ、今も続けていることに濱田の確固たる軸が見て取れる。

(つづく)

濱田祐太郎(はまだ・ゆうたろう)
​1989年、兵庫県生まれ。NSC大阪校35期生として、2013年にデビュー。2018年3月に『R-1ぐらんぷり』で優勝。今年5月には吉本新喜劇とコラボした舞台『盲目のお蕎麦剣士が巻き起こす新喜劇』に主演。趣味はギター。好きなものはサンリオ。

■インフォメーション
『迷ったら笑っといてください』
著:濱田祐太郎/発行:太田出版
『濱田祐太郎のブラリモウドク ―盲目芸人のブラリ旅in熱海 1時間スペシャル!濱田の目に夏の熱海はどう映る?―』
https://tver.jp/episodes/eptbmr0fs5

盲目のピン芸人 濱田祐太郎の街ブラバラエティが1時間特番になって帰ってきた!今回はブラリ熱海旅スペシャル!観光客賑わう食べ歩き商店街、海鮮グルメを堪能!さらに人生初のシュノーケリング体験や、20年ぶりの自転車運転も!果たして濱田の目には、熱海はどう映るのか?そして、濱田の唯一無二の武器、「毒舌」=「モウドク」を思う存分発揮しながら熱海の魅力を発見できるのか?