千尋との出会いは大きなもの「共演者のみなさんから学ぶ毎日でした」

「千尋との出会いはぼくにとって、本当に大きなものになりました。この先、さまざまな役を演じていけたとしても、絶対に色濃く残っている役だし、作品だと思います。俳優としてのあり方を、共演者のみなさんから学ぶ毎日でした」

 兄・柳井嵩役の北村匠海、実母・登美子の松嶋菜々子、育ての両親を演じたのは、竹野内豊と戸田菜穂。

「家族で食卓を囲むシーンでは、“どうしてぼくがここで一緒にお芝居をしているんだろう”と、われに返ってしまう瞬間がありました。撮影期間は長い間、北村匠海さんの現場の居方や、お芝居を間近で拝見し、ぼくも自分に合ったスタイルを見つけていきたいと思うようになりました」

中沢元紀 撮影/有坂政晴 ヘアメイク/速水昭仁 スタイリスト/田中トモコ 衣装協力/CULLNI、ロックポート

 千尋は、勉強ができ、柔道黒帯の有段者で、文武両道の好青年。幼いころから、今田美桜が演じるのぶに思いを寄せていたが、同じくのぶを好きな兄を応援するなど、けなげな面も。

「千尋の性格、精神は、ぼくの中に投影されていって、いまでも“こんなとき、千尋だったらどうするだろう”と考えることがあります。なにしろぼくは、“たっすいがー”なので(笑)」

 千尋は、ドラマ中盤で戦死してしまうが、その存在はずっと『あんぱん』という作品の中に息づいていた。

「ぼくも、千尋みたいにかっこいい男になっていきたいと思っています」