変化が訪れたのは20歳を過ぎた頃
「この作品に出演させていただいた時に“映画の世界ってこんなにも素敵で、楽しいんだ”ということを知ったんです。当時はまだ15歳で、“この仕事を続けていこう”なんて大きな決心をしたわけではないんですが、俳優という仕事の面白さや楽しさを教えてもらった気がします」
自然豊かな田舎町を舞台に、そこに住む中学2年生の右田そよの初恋と成長を描いた作品だ。この作品でヒロイン・そよを演じた夏帆さんは第31回日本アカデミー賞をはじめとする多くの新人賞を受賞した。その後も俳優として着実にキャリアを重ねた夏帆さんに変化が訪れたのは20歳を過ぎた頃だった。
「10代の頃からたくさんドラマや映画を観ていたかというと、実はそうではなかったんです。俳優という仕事を続けていく中で様々な作品に触れるようになって、自分の好きなモノが分かってきた……という感じでした。
デビューしたばかりの頃は、自分がどういうことをやりたいのか、どういう作品が好きなのかということも分かっていなかったと思うんです。そういう意味では、20歳になって何か大きなきっかけがあったというわけではなく、色んな人や作品と出会っていく過程の中で“こういう作品をもっとやってみたい”という欲が出てきたんだと思います。そのタイミングで作品も自分で選んでみたい……と」
こうして芽生えた「自分で選んでみたい」という気持ちを思い切って事務所に伝えたところ、意外にもすんなりと了承してもらえた。以降、自分から積極的に演じてみたいと思う作品を伝えるようになった。
現在放映中のドラマ『じゃあ。あんたが作ってみろよ』で演じるヒロイン・鮎美は、「自分が想像つかないことをやってみたい」という気持ちから出演を決めたという。その鮎美は亭主関白な恋人の勝男と別れてから、見た目も変わっていくのだが、夏帆さん自身はプライベートで気分を変えていく時に見た目も変えるということはあるのだろうか。
「見た目で変化させるということはあまりない ですが、服を新しくすると気持ちが変わった感じになるので、気分転換に服を買いに行ったりはしますよ(笑)」
一昨年には写真集『おとととい』を出版した。撮影に2年半、仕上げまで3年以上の時間を費やし、自身の日常を切り取った写真集だ。達成感に満ち、その仕上がりには「我が子のよう」と感無量だったそうだ。
「子供の頃から本が好きで、表現などの部分で何かしら影響を受けたのかなとは思いますが、初めて自分から“写真集を作りたいです”という話をしたんです。そこから写真選びや構成など、編集の方や写真家の方と話しながら作っていきました。普段のお仕事では場を与えられて、お芝居をしたり、写真を撮ってもらったり と、そこで仕事が終わることが 多いですが、この写真集は企画を立ち上げて仕上げまで、一冊の本を出すということに対して一貫して関わらせてもらったので、良い経験になりました」
セルフプロデュース写真集の制作で得た経験は大きな力となったようだ。もともと読書好きだという夏帆さん。本を読んだり、旅に出たり、常に自身のアップデートを続けている。
(つづく)
夏帆(かほ)
1991年6月30日、東京都出身。小学5年生のときにスカウトされ芸能界入り。2004年に俳優デビュー。『世界の中心で、愛をさけぶ』(04年)、『女王の教室』(05年)などに出演。2007年公開の映画『天然コケッコー』で、『第31回日本アカデミー賞』新人俳優賞、『第32回報知映画賞』最優秀新人賞を受賞。以降、映画「うた魂♪」(08)や「きな子 見習い警察犬の物語」(10)、「みんな!エスパーだよ!」(13)などの話題作で活躍する。是枝裕和監督の「海街diary」(15)では、綾瀬はるか、長澤まさみ、広瀬すずとともに主人公の姉妹を演じ、第39回日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞した。
【作品情報】
火曜ドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』
毎週火曜日 よる10時よりTBS系にて放映
出演:夏帆 竹内涼真 中条あやみ 青木柚 前原瑞樹 サーヤ(ラランド) 楽駆 杏花 池津祥子 菅原大吉
原作:谷口菜津子
脚本:安藤奎
音楽:金子隆博
主題歌:This is LAST「シェイプシフター」
挿入歌:Chilli Beans.「that's all i can do」(A.S.A.B)
演出:伊東祥宏 福田亮介 尾本克宏
ⒸTBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/antaga_tbs/

