芸歴半世紀以上、俳優・柄本明の人生は、幼いころから演劇で彩られてきた。映画に憧れ、劇団を立ち上げ、いまもエンタメの第一線で活動し続けるとともに、下北沢に根を張って芝居を続ける。柄本明の人生をつくってきたTHE CHANGEとは――。【第3回/全4回】

「うちはおやじとおふくろも貧乏だったんですけど、映画の話しかしない家でした。それがずっと続いているんです」
1948年生まれの柄本が芝居に惹(ひ)かれた原体験は、まだ日本が貧しかった幼少期に出合った、色鮮やかな映画の数々だった。
「僕は団塊の世代で、あのころは戦争でアメリカに負けて、アメリカ映画、ハリウッド映画がドーンと入ってきたわけでしょ。スクリーンを見れば冷蔵庫や洗濯機があって、日本人はみんな打ちのめされたんじゃないの。“こんな国と戦ったのか”と。うちも湯水のようにやってきたアメリカ映画ばかり見て、それで貧乏を忘れるってことができたの」