その透明感と確かな演技力で魅了する俳優・波瑠さん。NHK朝ドラ『あさが来た』(2015年)以降、出演した数々のドラマで主演を務め、いまや国民的俳優の一人といっても過言ではない。モデル・俳優としてキャリアをスタートさせた波瑠さんにとって今日までにおける「CHANGE」とは?【第1回/全3回】

凛とした、という言葉がある。「強さの中にも清らかさを兼ね備えた」という意味だが、波瑠さんに会うと、この言葉がこれほど当てはまる女性はなかなかいないのではと感じさせられる。
そんな彼女が川栄李奈とW主演を務めるドラマが『フェイクマミー』(TBS系)だ。元バリキャリの花村薫(波瑠)が、元ヤンで社長のシングルマザー・日高茉海恵(川栄李奈)の娘の“母親なりすまし”から始まるウソとトラブルだらけのファミリークライム・エンターテインメント。自身が演じる役柄、そして共演者への思いを、真っ直ぐな言葉で語ってくれた。
波瑠さんが演じる花村薫は、東大を卒業して大手企業に就職し、順風満帆なエリート街道を歩んできた女性。しかし、その会社を辞めて転職活動に苦戦しているという役どころだ。作中では“母親のなりすまし”をすることになるが、奇しくもプライベートで心境の変化があったタイミングでのオファーだったという。
「私の友人たちは結婚していても子供がいない人が多かったんですけど、いま彼女たちがベビーブームになっていまして、今年出産した人が結構いるんです。一番最初にママになった人のお子さんはもう小学校の高学年か中学生になっていますが、その当時の私は全然ママになる実感が想像できない時だったので、働きながらお母さんになることとか専業主婦になることのどちらの想像もイマイチできていなかったんです。でも、ここ最近は友達の出産も増え、姉が育児をしていたり、小さな子と接する機会も増えてきて……というタイミングで、この作品を任せられたことはすごく嬉しかったです」
これまでも、いわゆる“仕事ができる”キャラクターを演じることが多かった波瑠さん。そのつど「ほんとは違うのにな(笑)」と感じながら演じてきた部分もあると、はにかみながら明かす。
しかし、今作で演じる薫の生き方には、深く共感する部分があるようだ。
「薫という女性は自分の築きあげてきた仕事や学歴に恥じない生き方をしてきたからこその理想の高さであったり、自分がどんな人間であるかということへの理想がとても高いんだなっていうのを演じていて感じます。自分が頑張っているからこそ周りの人にも理解して欲しくて、できれば同じくらい頑張って欲しくて……という理想の高さをちょっとだけ押し付けるようなかたちになってしまう気持ちは少しだけ私もわかる部分がありますね」
その言葉に、彼女自身の仕事への向き合い方が垣間見える。
「がむしゃらに頑張る分、やっぱりそうでもない温度感で向き合っている人をみたときに少しだけ悲しくなるというか。傷つく自分がいるなと思ったときに“あ、これ薫とたぶん一緒だな”って思ったりはしますね」