作品の舞台が全編江戸時代へ。前作よりも「濃いものになると思う」

 演じるのは北斎の娘・お栄。意識するのはどんなところだろうか。

「お栄という役自体は前作と変わらないので基本の部分は引き続きなんですけど、前回の物語の舞台が江戸と現代が半分半分だったのに対し、今回は全編が江戸時代になったということもあって、より濃いものになると思っています。絵を描くということだけが好きで、でもそれを貫くことが大変だった時代を生きた人たちのエネルギーみたいなものが濃厚に伝わるようにというのは思っています。
 お栄は北斎を支えた人、ではあるんですけど、それだけではないんです。自分も絵師として、本当は前に出て行きたかったけれども、女の絵師というものがありえなかった時代に生きて、その苦悩や葛藤も抱えていた。今回はそういう部分も描かれるので、お栄というキャラクターの厚みが前作よりも出てくるのかな、と思っています」

 稽古は日々刺激的なものになっているという。

「毎日みんなで“ここ違うね”“ここはこっちのほうが”と言いながら台本を変えていっています。(西岡)德馬さんのセリフが変わると、私のセリフも調整が必要となる、そういう微調整を繰り返しながら日々進化している感じです。
 緊張感もあります。江戸時代に生きた人たちの姿を生々しく伝えたいという思いがあって、説明的ではなく、会話の中で緊迫感やリアルな状況が伝わるよう、みんなで作り上げているので、とても刺激的な時間を過ごしていますね」

雛形あきこ 撮影/冨田望