コメディだからこそ心打たれるシーンがあるところが多くの人の心に刺さる

「給食って、ものすごくニッチなのに、誰の心にも届く不思議なテーマですよね。それに給食のシーン以外にも大人でもホロリとさせられるハートウォーミングなところもある。市原さんも言っていましたけど、コメディだからこそ心打たれるシーンがある、そういうところが多くの人の心に刺さるんだと思います」

ーー作品の温かい雰囲気の大きな要素の一つが、いとうさんの存在だと思います。そんないとうさんが俳優を目指すきっかけは、なんだったのですか?

「中学生の頃に、映画『あゝ野麦峠』(79年)を観たことでしたね」

ーー大竹しのぶさんが主演で、明治から大正期にかけての出稼ぎの製糸女工の哀切を描いた作品でした。

「若い女性たちの過酷な生きざまに、人間の本質をえぐられたようでした。それまでSFや怪獣映画のようなエンタテイメント作しか観たことなかったので、完全に打ちのめされて、慟哭しながら観たんです。
 それで、こんなふうに人を感動させられて、考えさせられるのは、すごくいい仕事だなって思ったんです。アイドルになりたかったんじゃないですよ」

 1982年に「ミスマガジンコンテスト」で初代グランプリを受賞し、アイドルとしてデビューしたいとうさん。その後、自身が「アイドルから抜け出すきっかけになった大切な作品」と語る伝説のドラマ『不良少女とよばれて』(TBS系、84年)に出演する。

(つづく)

いとうまい子(いとう・まいこ)
1964年8月18日、愛知県生まれ。B型。T155。82年「ミスマガジンコンテスト」で初代グランプリを受賞し、デビュー。女優、タレント活動をする一方で、2010年に早稲田大学人間科学部eスクールに入学、予防医学やロボット工学の研究を行っている。今春からiU情報経営イノベーション専門職大学で教授、洗足学園音楽大学で客員教授を務める。