「もともとはごく普通の人だったと思う」戦後の混乱で活きざるを得なかった松永への思い

北山「この作品は再演ものですが、誰かのものをやるというよりかは、咀嚼して、自分で構築して作った、新しいものを現代に残したいです。それが、今回この舞台をやらせていただく意義になると思います」

――では、病に侵されたやくざの松永という役はどのように解釈されていますか?

北山「松永は、もともとはごく普通の人だったと思うんです。でも過酷な環境の中で、生きるために“強さの鎧”を身につけざるを得なかった。俺が表現したいのは、その鎧の内側にある、一番柔らかい核の部分です。その鎧が誰かによって一枚、また一枚と剥がれていく……。
 だからとにかく、松永の鎧をはがしてやろうと思っています(笑)。彼の葛藤や変化を通して、“人間って、そういうものだよね”という共感を、お客様と分かち合えたら嬉しいですね」

北山宏光 撮影/有坂政晴