自然に涙が溢れてきたんです

 このドラマで八木さんが演じるのは主人公の樹が務める遺品整理会社「Heaven‘s messenger」の新入社員・久米ゆずは。

ドラマ『終幕のロンド』で八木さんが演じるゆずは Ⓒカンテレ

「ゆずはのバックボーンがちょっと複雑で、心を閉ざしてしまう部分を持っているんですけれど、Heaven‘s messengerに入社してそれが少しずつ変わっていくんです。そこで働くことでの成長や変化をどう表現していくか……というのが今回の課題であって、撮影中もいつも考えていました」

 常にパーカーのフードを目深に被り、人とのコミュニケーションが苦手という陰なキャラクターだが、樹や社長の磯部豊春(中村雅俊)など「Heaven’s messenger」の面々と関わり、徐々に変化を遂げていく過程も丁寧に描かれている。

ーー台本を読んで泣いてしまったということですが、その理由は?

「忘れてしまっている“死” について、たくさんのご遺族の方の色々な愛のカタチが書かれていました。そこにグッてきて自然に涙が溢れてきたんです」

――これまでにも台本を読んで泣いてしまうという経験はあったんですか?

「戦時中のお話を描いた『無言館』*(2022年)という作品に出演させてもらった時にもそういうことがありました」

*『無言館』は長野県上田市に実在し、戦没画学生の絵を展示する美術館・無言館を舞台に、その設立のために奔走する館主・窪島誠一郎の姿を描いた作品。2022年の『24時間テレビ「愛は地球を救う」45』(日本テレビ系)内で放送されたスペシャルドラマ。脚本と監督が劇団ひとり、主演は浅野忠信。八木さんは影山拓也(IMP.)演じる戦没画学生の日高安典が最後まで描き続けた恋人、雪江を演じた。

「今回は登場人物が多いのですが、台本にはそれぞれがしっかりと描かれていて、誰かが取り残されるということがないんです。みんな活き活きと動いていると感じることができ、本当にすごいと思いました」

 本作『終幕のロンド』ではどこか陰のある役を演じているが、社長役の中村雅俊は、八木さんについて「色んな表情を持っていて、芝居の見せ方がすごいです」と賛辞を惜しまない。