観る人にとってはその回が“すべて”だからこそ「今日の、またそのときのベストを尽くす」

 ところがある日の本番前、iPodが壊れてしまったという。

「完全にテンパっちゃいました。いつも『Will Be All Right』を聴いているからうまくいっているのに、これじゃ失敗するかもしれない、って」

 なんとか舞台は無事に務めたが、これを機会にルーティンを見直すことにした。

「ルーティン自体を否定するわけじゃないけど、作りすぎるのもマイナスだと気づいたんです。そこでひとつずつ減らしてみたのですが、不思議なことに、減らせば減らすほど、自分が整うんですね」

 うまくいくためのルーティンが、いつの間にか枷(かせ)になっていた?

「そうかもしれません。いま、必ずやるのは深呼吸と、誰かに背中をたたいてもらうこと。どっちも、道具なしで、いつでもどこでもできるから。ひとりで目を閉じて、ゆっくりと呼吸をして心を落ち着けてから気合いを入れてもらうことで、余計なことを考えなくなりました」

 それでも、時にはプレッシャーに押しつぶされそうになる瞬間がある。

「たとえば、まもなく幕が開く『PRETTY WOMAN The Musical』のエドワード役はシングルキャストなので、東京公演の23回すべてにぼくが出演します。その間に、ぼくの個人的な事情……声の調子が悪い、頭が痛い……があったとしても、見に来てくださるお客さまにとっては、その回がすべて。だから、どの回も金メダルを取りたい、でも人間なんだから、毎回同じようにはできない。そこでたどり着いたのが、シンプルに“今日の、またそのときのベストを尽くす”です」

 できうる限り、すべての回で自身にできるベストなパフォーマンスを届けたいと、城田は熱く語る。貴重な時間とチケット代を使って、劇場に足を運んでくれるお客さんに、心から楽しんでもらうために。

つづく

しろた・ゆう
1985年12月26日生まれ、東京都出身。2003年にミュージカル『美少女戦士セーラームーン』の地場衛/タキシード仮面役で俳優デビューし、『テニスの王子様』(2005~2006)、『スウィニー・トッド』(2007)、『エリザベート』(2010・2015~2016)、『ファントム』(2014・2019・2023)、『キンキーブーツ』(2022)など数多くのミュージカルに出演。テレビドラマでは『花ざかりの君たちへ〜イケメン♂パラダイス〜』(フジテレビ系)、『ROOKIES』(TBS系)などで注目を集め、大河ドラマ『天地人』『どうする家康』(NHK)、NHK連続テレビ小説『純と愛』『カムカムエヴリバディ(語り手)』など多数作品へ出演。現在『推しの殺人』(日本テレビ系)に出演中。

▪︎ヘアメイク:Emiy(エミー)【Three Gateee LLC.】
▪︎スタイリング:黒田領
▪︎衣裳クレジット
ジャケット¥ 500,500、パンツ¥220,000、ネクタイ¥25,300/全てボッテガ・ヴェネタ(ボッテガ・ヴェネタ ジャパン)、その他スタイリスト私物
 問い合わせ先:ボッテガ・ヴェネタ ジャパン 0120-60-1966

作品情報
『PRETTY WOMAN The Musical』
▪︎出演:星風まどか/田村芽実(Wキャスト)、城田優、エリアンナ/石田ニコル(Wキャスト)、spi/福井晶一(Wキャスト)、寺西拓人 他
▪︎脚本:ゲイリー・マーシャル & J.F.ロートン
▪︎作詞・作曲:ブライアン・アダムス & ジム・ヴァランス
▪︎演出・振付:ジェリー・ミッチェル
▪︎日本語版上演台本・訳詞:城田優
▪︎公演詳細
東京公演:2026年1月22日(木)〜2月8日(日)東急シアターオーブ
大阪公演:2026年3月1日(日)〜3月8日(日)オリックス劇場
▪︎公式サイト https://prettywomanjp.com