2011年に女優としてデビュー以来、数多くの映画やドラマに出演し若手演技派女優の地位を確固たるものとしている門脇麦。NHKの連続テレビ小説『まれ』(15年)、大河ドラマ麒麟がくる』(20年)での演技でも大きな注目を集めた。女優人生の中で訪れた「CHANGE」について語ってもらった。【第2回/全5回】

門脇麦 撮影/松野葉子

 主演映画『ほつれる』で演じた、綿子をほうふつとさせるような、青いワンピース姿の門脇麦さん。一つ一つのシーンを思い出しながら語りだした。

見て見ぬふりをする人たちを演じ、自分も重なっているかもしれないと言う不安

 田村健太郎演じる夫である文則と、染谷将太が演じる恋人の木村の間で揺れ動く綿子。その繊細な心の機微を、目線や仕草などで演じた門脇さん。実生活で文則や木村のような人物がいたら、どのように感じるのか。

「文則は、ちょっと束縛がきついですよね。でも、恋人の木村だって別の女性と結婚しているからずるい男性なんですけれど。

『ほつれる』に出てくる登場人物たちは、みんな現実や問題から目をそらして逃げている。見て見ぬふりをしている人たちだけれど、誰でも環境が変わったら自分もそうなってしまうかもしれないじゃないですか。

 人間の本質ともいえる悪い部分を出さないように暮らしているけれど、誰にでもある感情。手放しで共感はしたくないけれど、ちょっとずつ自分にも重なる部分があるから観ていてヒリヒリするんじゃないかなと思います」

 作品の中では、どういう部分に共感したのだろうか。

「綿子が、夫がいながら恋人に惹かれていく部分についてはわからないですけれど、何かが当たり前のことになってしまって、感情が麻痺していく様子は理解できる部分もあります。

 たとえば、仕事に慣れていくことや、疲れていることに気づかないふりをすることが重なっていく。そういう風に自分の感情にフタをしていると、いつの間にか“見て見ぬふり”をしていたことも忘れてしまって、当たり前になっていく」