オタクの青年から正義の勇者、さらには闇金業者やAV監督まで、まったくの別人格を深く掘り下げて演じる山田孝之。幅のあまりの広さから、人は時に彼を“カメレオン俳優”と呼ぶ。声優、監督演出家、音楽活動、青果の生産者など多彩な顔を持ち、すべての活動に全身全霊を傾ける山田さんの「CHANGE」とは、なんだったのだろうか?【第5回/全5回】
ワクワクできるかどうか
オタクの青年から反社会的な人物まで、まったくの別人格をまるで憑依したかのように演じ分ける山田孝之さん。仕事のオファーを請ける基準は、どこにあるのだろう。
山田「重要視するのは“ワクワクできるかどうか”ですね。たとえば映画『唄う六人の女』だったら、石橋義正監督が『ミロクローゼ』以来、またお声がけくださったのが嬉しいし、竹野内豊さんとも10年以上ぶりに共演できるのが嬉しい。
内容も、竹野内さんが演じるカメラマンとは自然環境に対する考え方だったり、お金の価値観だったり、考え方がまるで違うけれども、“じゃあ、どっちが悪いのか”と問われると、単純に善と悪に分かれているわけではない。そこが“深いテーマだな”と感じ、引き受けない理由はなかったです。
反対に“今、これをやるタイミングじゃないな”と思ったら、その仕事はやらないです。決め手は直観ですね。理屈ではないです」
仕事を選ぶ線は「ワクワクできるかどうか」だという山田さん。そうやって新境地を拓き続けてきた。
山田「たぶん、100人に“山田孝之の代表作といえば?”と質問をすると、けっこうバラけると思うんです。人によってはウシジマだったり、勇者ヨシヒコだったり。“こういう役をやる”みたいなセルフプロデュースは、まったくしないんです。自分で決めたところで結局、捉え方は人それぞれです。
ただ、引き受けたものの“この役は難しいな”と感じる場合も少なくはないです。初めてドラマに出演して25年、この間にどれだけ絶望してきたか。自分のスキルの足りなさだったり、役を飲み込めなかったり。芝居をするうえで、セリフって、覚えるもんじゃない。役にしっかりと向き合うと、心から出てくるものなんです。それが出てこないと、“役との対話が足りないな”と反省します」