熊本移住で知ったゼロから始める面白さ

黛「これが全然、苦労していなくて。すみません、つまらなくて。熊本でも『辞令は突然に…』見ていましたよって言ってくださる方が多くて。お国柄なのか、熊本の方って、すごく優しいんですよ。初めての土地でゼロからいろいろ構築していくのは大変だって覚悟していたんですけど、行ってみたら楽しいことしかありませんでした。2年間住んだんですけど、できればもうちょっといたかったですね」

黛英里佳 撮影/冨田望

 熊本を絶賛する黛さん。ただ、移住の前にここなら楽しく住める、と思ったポイントがあったという。

黛「向こうに行ったときに、フラッと町の本屋さんに入ったんですけど、そこがすごくすてきな本屋さんだったんです。売っている本を、店主の方のセンスで選んで置いている。こんなすてきなお店がある街だったら、住んでみたら楽しいかもって、思えたんですね」

 熊本時代に何度も通い、特別な場所になった一軒の本屋さん。黛さんは熊本で暮らしながら、そういう場所を少しずつ見つけていった。

黛「初めて住む土地で、家以外に自分の大事な場所を作るのは、生活を潤してくれるんだって実感しましたね。地元の人も驚くぐらい、いろいろ調べてあちこちに出かけました。ゼロから構築するのも意外と悪くない。大変だと思っていたけれどやってみたら楽しかった。人生に前向きに取り組めるというか、熊本に住んでそう考えられるようになったのは、自分にとって大きな変化でした」

 初めての土地に移り住んで、その土地の魅力を知る。リアル『ケンミンSHOW』は、黛さんの人生観を大きく変えたのだった。

水沢駿(みずさわしゅん)
1979年大阪府生まれ。2000年から関西の劇団に所属し、07年にタレントデビュー。同年に『秘密のケンミンSHOW』(読売テレビ)内のドラマ「県の中心で愛を叫ぶ」に、主人公・東京一郎(あずま・きょういちろう)として出演。同ドラマは後に「辞令は突然に…」に発展し、爆発的な人気を誇る。その後も舞台やドラマなどで活躍している。

黛英里佳(まゆずみえりか)
1985年埼玉県生まれ。2004年にモデルとしてデビュー。舞台などで活動した後に、09年に「「辞令は突然に…」の東はるみ(旧姓:数寄屋橋はるみ)役を演じ、大人気となる。15年にはドラマ『新・牡丹と薔薇』(フジテレビ系)の小日向ぼたん役・吉田富貴子役(一人二役)として主演。20年に結婚し、熊本に移住後、第一子を出産。現在は東京に戻り、活動をしている。