上田谷真一さんはプロの経営者だ。東大卒、経営コンサルタント出身で、数々の会社の社長や会長を歴任してきた。
 経験や実績、見識などを買われ、社長や会長に就任し、らつ腕をふるうプロの経営者。いわゆるサラリーマン経営者が会社員としての成果や実績、人事評価や社内力学でトップに立つのに対し、プロの経営者は「実力」を認められ、抜擢される。一方で、創業者やその一族、古参の番頭などから煙たがれ、手足を縛られることも多い。株式会社三浦屋取締役会長の上田谷さんに「THE CHANGE」を深堀りした。【第1回/全5回】

「三浦屋」会長・上田谷真一 撮影/冨田望

 

 気鋭の経営者はカジュアルな服装で、ソフトな雰囲気を醸し出しつつ、私たちの前に現れた。上田谷さんの経歴は華やかだ。1995年に経営コンサルタントの大前研一氏が率いる『大前・アンド・アソシエーツ』の設立に参画し、企業の新規事業開発などに関わり、2003年に「黒田電機」にて海外事業担当役員となった。その後、「ディズニーストア」、「クリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパン」、「バーニーズジャパン」の社長を歴任。2017年には大手アパレル「TSIホールディングス」の社外取締役に招へいされ、2018年から2021年まで社長を務めている。

 まず、いわばプロの経営者として三浦屋の会長に就任したいきさつを尋ねた。

「三浦屋は、2021年にいなげやグループから投資会社・丸の内キャピタルへと株主が交代しました。私は旧知の丸の内キャピタルの責任者から打診を受け、三浦屋の経営に参画することになりました。

 私はいわゆるサラリーマン経営者ではなく、個別案件ごとに外部から招聘されるフリーランスの経営者です。社内地盤を持たずに企業に入って行くので、自分の意思決定を支えてくれるステークホルダーと信頼関係をつくれるか否かが極めて重要になります。ビジネスの現場で多くの人が使うような言葉で言えば、握り合えるか否かー。

 自分が創業オーナーでもない限り、社長に就任したからと言って、フリーハンドで改革を実行できる訳ではなく、社内外とからの反対で頓挫することが多々あります。その時、最終意思決定権を持つ株主と握り合えていると乗り越えられる確率が格段に上がります。

 日本企業は叩き上げ社長が多いのですが、社内地盤を持った生え抜き社長でも会社をなかなか変えられないと言われます。その大きな理由の一つは、痛みを伴う変革を遂行するリーダーを支える力が働くかどうかだと私は思っています。

 三浦屋の会長職をお引け受けしたのは、株主となった丸の内キャピタルチームと信頼関係が築けると思ったからです」