経験や実績、見識などを買われ、社長や会長に就任し、らつ腕をふるうプロの経営者。いわゆるサラリーマン経営者が会社員としての成果や実績、人事評価や社内力学でトップに立つのに対し、プロの経営者は「実力」を認められ、抜擢される。一方で、創業者やその一族、古参の番頭などから煙たがれ、手足を縛られることも多い。
 東大卒、経営コンサルタント出身で、数々の会社の社長や会長を歴任してきたプロの経営者の上田谷 真一さん(株式会社三浦屋 取締役会長)に「THE CHANGE」を深堀りした。【第5回/全5回】

「三浦屋」会長・上田谷真一 撮影/冨田望

 

 東大卒で、プロの経営者として着実な歩みをしてきているように見える。なぜ、変わることに抵抗がないのだろうか。あえて変わらなくとも、成功を手にすることができるのではないか。

「変わることに抵抗がまったくないわけではありませんが、転職をするうえでのハードル(心理的な抵抗)は比較的低かったのかもしれません。それには、中学校の時の経験が影響しているように思います。

 親が転勤をしたことで、転校を繰り返し、3つの中学校に籍を置きました。クラスに慣れ親しみ、友人らができて、せっかく仲良くなれた頃に学校を離れる。子ども心に辛い経験ではあったのですが、なんとかなるものなのです。その後、何かにぶつかった時にはがんばれば乗り越えていけるだろうと前向きに思うことが多いのも、中学校の時の経験によるものなのかもしれませんね」

 東大の時の友人らは大企業に就職し、ある程度成功しているケースが多いのではないか。

「親しい同級生の一人で現在、大手金融機関で役員ポジションに就き、活躍している男性がいます。元々優秀でバランス感覚も抜群でさすがだな!と尊敬してます。

 羨ましいなと思いますが、私にはできないだろうとわかってます。10代の頃から、既成の秩序、序列、既得権益などが過剰に嫌いで、ずるくならないようにしながらギリギリのバランスをとって組織をまとめていくという能力が恐ろしく低いのだと思います。エスタブリッシュメント企業で物事を進める上では必須の能力なんでしょうけど。 勿論私が勤めてきた、グローバル企業やオーナー企業、ファンド傘下の企業や新興上場会社など、どんな組織でも要求されることあのだと思いますが、違う流儀でも生き延び易かったのは事実です。

 私は、フリーランスの雇われ経営者のような立場です。大企業のサラリーマン経営者と比べると、処遇や待遇、生活は不安定になる時もあるのかもしれませんが、自分には向いていると思います。何よりも、こういうリーダーの仕事が好きです」