子どもには体感を大事にさせたい
――難しいけれども、やはり「本物」に触れることは大事だと。
「僕は現代っ子の走りの世代なんです。スーパーファミコンではない、最初のファミコンが小学生のときに出てきた世代。あとパソコンのことをマイコンと言っていて、それがまだ普及はしていなかった時代です。マイコンが世に出て来て、お金をかけられる人だけが手にいれ始めていた。バーチャル第一世代です。本物から遠ざかり始めた世代だからこそ、本物を追求したい思いもあるのかもしれません」
――いまは親という立場でもあります。お子さんには本物を与えたいですか?
「体感を大事にさせたいとは思います。テレビで山を見て、それがステキだったからといって、山を見たとは思わないでくれと。本物を本当に見ないと、山はわからないよと。自分自身が体感することで得ることがある。
今回、たくさんの絵画が出てきますが、僕自身、初めてゴッホの絵を見たときは驚きました。もちろん本などでは見ていました。でも本ではあの立体感はわからなかった。“これ、立体じゃん”と。絵画というより彫刻に近いぐらいで、そこにゴッホの執念を感じました。
それは本物を見ないと絶対に伝わらないと思うんです。何が本物か・・・。すごく難しいですけど、体感したなかでいろいろ感じてくれるといいなと思います」
――体感が肝ですかね。
「やけどすると“本当に熱いんだ”とか。転ぶと思った以上に“痛い” とか。ポジティブなことだけでなく、ネガティブなことも含めて、体感をしてほしいなと。映画館の没入感もそうです。音も全然違いますし、強制的に最後まで観る体験や、ほかのお客様と一緒に観る良さもある。体感は子どもにも大事にしてほしいし、自分自身も大事にしていきたいです」
哲学的な話になっていきそうだが、『おしりたんてい』を観た大人たちは、深淵なテーマを考えることになる。
津田健次郎(つだ・けんじろう)
1971年6月11日生まれ、大阪府出身。1995年に声優デビュー。近年は俳優業でも活躍。声優業の近年の代表作として、『遊☆戯☆王 デュエルモンスターズ』や『薄桜鬼』『ゴールデンカムイ』『呪術廻戦』『チェンソーマン』など。俳優業として、2020年のNHK連続テレビ小説 『エール』(兼ナレーション)、ドラマ『最愛』『ラストマン-全盲の捜査官-』『大奥 Season2』、映画『映画 イチケイのカラス』『わたしの幸せな結婚』『映画 マイホームヒーロー』など多数。
『映画おしりたんてい さらば愛しき相棒(おしり)よ』
原作:トロル
監督:セトウケンジ
脚本:高橋ナツコ、成田順
声の出演:三瓶由布子、齋藤彩夏、櫻井孝宏、 ゲスト:仲里依紗、津田健次郎、二又一成
(C)トロル・ポプラ社/2024「映画おしりたんてい」製作委員会
配給:東映 公開中