美しいだけではない世界が子どもにもある
――「どういう発想?」というのは、まさに私も思いました。「え、どういうこと?」と。
「ですよね。常識では追いつけないところがある。強烈なキャラクター。名前からしてすごいし、でも見ると、たしかに“おしりたんてい”だなと(笑)。必殺技もすごいし。だいたいの大人は“は? 肉体構造どうなってるの?”と疑問を抱くと思います。でもそういったくだらない疑問をすべてぶっ飛ばす勢いを感じるというか、突き抜けた感じがある。それに子どもは“そんなことより面白いでしょ”と。純粋にスッと受け入れてしまう」
――そうかもしれません。
「“え、どういうこと?”というツッコミはあまり感じずに、子どもは“そういうものだ”と受け入れるんじゃないでしょうか。そのうえで、たとえば今回の映画版なんて、かなりシビアな物語なんですよね」
――キンモク先生の物語が本当に響きました。
「とても悲しみに溢れているキャラクターです。でもそういったものを、子どもが観るんだなと。そして色々知っていくんだなと思いました。ただただ美しいだけではない世界だけれど、きっと、美しいだけではない世界が、子どもの世界にもあるんだろうと思うんです。子どもの世界にもケンカはありますし、悲しいこともきっとあるでしょう。意地悪された、意地悪しちゃったとか。そこで傷ついたり。いろんなことがあるんだろうなと。キンモク先生は、そういった苦いものも描いていくキャラクターなので、しっかりと演じなくてはいけないと思いました」
筆者は本作のキンモク先生の描く側面は、大人に響くのだろうと思ってしまっていた。子どもは「おしりたんてい」の可愛らしい面を楽しむのだろうと。それは傲慢な見方であり、たしかに津田さんの言うとおり、子どもの世界にも悲しいことも苦い出来事もある。それをきっちりわかったうえで、表現された津田さんのキンモク先生だからこそ、より深いところまで響くのだと改めて知らされた。
津田健次郎(つだ・けんじろう)
1971年6月11日生まれ、大阪府出身。1995年に声優デビュー。近年は俳優業でも活躍。声優業の近年の代表作として、『遊☆戯☆王 デュエルモンスターズ』や『薄桜鬼』『ゴールデンカムイ』『呪術廻戦』『チェンソーマン』など。俳優業として、2020年のNHK連続テレビ小説 『エール』(兼ナレーション)、ドラマ『最愛』『ラストマン-全盲の捜査官-』『大奥 Season2』、映画『映画 イチケイのカラス』『わたしの幸せな結婚』『映画 マイホームヒーロー』など多数。
『映画おしりたんてい さらば愛しき相棒(おしり)よ』
原作:トロル
監督:セトウケンジ
脚本:高橋ナツコ、成田順
声の出演:三瓶由布子、齋藤彩夏、櫻井孝宏、 ゲスト:仲里依紗、津田健次郎、二又一成
(C)トロル・ポプラ社/2024「映画おしりたんてい」製作委員会
配給:東映
公開中