今につながる是枝裕和監督との出会い、映画『ワンダフルライフ』

井浦「僕の場合、大きな変革は作品というより、人との出会いです。人との出会いが作品という形にもなっていきますから。僕には3回重要な出会いがありました。最初は東京の山奥に住んでいた、ただのカルチャーオタクが19歳のときにモデル事務所にスカウトされたことです。今につながってくる大きな変化です。

 僕はカルチャーとファッションが好きで。当時はファッションを突き詰めて洋服屋をやりたいとか…モデルの仕事をしながら動いていく中で、自分の人生に変化をもたらす、思ってもみなかった次の出会いがありました。それがデビュー作になる是枝裕和監督の映画『ワンダフルライフ』(1999年)の出演です」

 当時、俳優の経験がまったくない井浦さん(当時の芸名はARATA)を主役に抜擢した『ワンダフルライフ』は、是枝監督の2作目の作品。日本のみならずアメリカでも公開され、日本のインディペンデント映画では異例のヒット作となった。

井浦「そのときの出会いが今の仕事につながってきます。23歳のとき、モデルの仕事を卒業し、洋服屋と俳優の仕事を同時にスタートしたんです。もちろん僕の中では大きな出来事でしたが、23歳で俳優を続けていくという志もなかったし、芝居もわかっていなかったので、精力的に俳優に向き合うことができない……というか“わからなかった”んです」

 俳優とアパレルという2つの仕事を並行していた井浦さん。だが、だんだんと映画を作ることの面白さに気づいていく。