大変さより楽しさの方が大きかった
――初めてのこと。
「こんなに毎日毎日、ずっと同じキャスト、同じスタッフさんで一人の役を約9か月演じ続けるということが初めてだったんです。その楽しさでカバーされてたんじゃないかなと。今になって思うことがあります」
――松下さんにとっては、大変さより楽しさが大きかったんですね。
「何の根拠もなしに“私は大丈夫”と思っているところがあったんです。けど、どうしてもしんどいときはありますよね。それでも“大変だった、つらかった”という気持ちより、楽しかったなと思えたのは、作品のいいところを、私自身が感じられていたからだろうと思います。好きすぎて間違って現場に行っちゃったこともあったんです」
――撮影がお休みの日に?
「はい。それだけ充実していたのは、作品のカラーもあったでしょうし、スタッフのみなさん、キャストのみなさんの力もあったと思います。あの現場で教えてもらったことは、今でも大切にしています。あの経験があったから、今でも私は“なんでもできる!めげない!”と思っているところがありますね」
――視聴者にとってもですが、松下さんにとっても大きな作品になりましたね。
「『ゲゲゲの女房』との出会いが、今の私を作ってくれている部分は大きいと思います」
――毎日撮影で、単純にセリフも動きも考えることが膨大だったと思います。松下さんは、いつも落ち着いていて、それこそ失敗しないイメージがあります。
「『ゲゲゲの女房』のときというわけではないですけど、これまでの経験のなかには、何十回言っても言えないセリフがあったりすることもあります。一度言えなくなると、ずっと言えなくなってしまって。“さっきまで言えてたのに!”って。急に涙が出なくなったり。焦るとよりできなくなりますし」
――そういったときは、休憩を挟んだりするのでしょうか。
「私、それはイヤなんです。現場を止めることが、私は一番イヤですね」