人生で忘れられない新人公演の“主役抜てき”

 柚希さんにとって、新人公演は忘れられない重要な舞台だという。周りも柚希さんを主役としてふさわしい俳優にするために奔走した。

「やっぱり新人公演の『王家に捧ぐ歌』で初めて主役をしたときから、意識が変わってきました。先輩方からもいっぱい教えていただきましたし、お客様から見て素晴らしいものを見せないといけないというプレッシャーを感じていました」

 これまでのキャリアを振り返っても、「つらかったと感じたことはないですね」と答えた柚希さん。しかし、宝塚時代は歌唱で相当な苦労をしたという。

「研3(注:研究生3年生、入団後3年目)のときに、『エトワール』(注:大階段で歌って、ショーを締めくくる役割)で、4人で歌う演出があったのですが、まだまだレベルには到底達していなく、先輩方が心配して歌の先生を紹介してくださり、公演をしながら毎日必死にレッスンという日々を送っていました」

 はたから見れば、厳しいプロの世界だが、柚希さんにとっては困難を克服していくことで自信につながっていった。

「新人のころは次から次へと役をいただいて、また歌う演出があると、なんとかしなければならないと練習し続ける日々でした。本当に、時間が足りないような感じでした。目の前のことに必死でしたね」