オリジナルの衣装を作ってみた
あるとき、日暮里に生地を買いに行って自分でオリジナルの衣装を作ったんです。布にでっかい穴をあけて、もう1枚別のストールを巻いただけだったんですが、“ゴスペルシンガーみたいで素敵だな”って自分でもすごく気に入った。そういう発見を繰り返して、大学の卒業演奏会では初めてソプラニスタと名乗って自分の衣装で出ました」
岡本さんにとって忘れられない舞台は、大学時代に初めてソロパートを歌ったコンサートだ。今とは違った不安から緊張に押しつぶされそうになった。
「大学3年生で『第九』のソプラノソロに抜擢されたときも、緊張しました。プロになった今と違うのは、ドイツ語の発音を間違ってしまうんじゃないかとか、発声のフォームが崩れてしまうんじゃないかという経験不足からくる不安でした。ほんとうに楽しさよりも恐怖のほうが勝っていました。コンクールになると、絶対にミスがあってはいけない。でもコンサートはその人の良さが伝われば成功だと思うんです」
岡本さんの信条は、レッスンよりも舞台。大学生のころからコンサートで歌うことを大事にしてきた。
「大学に入学してから、すぐに舞台に立つ機会があった。100回のレッスンを受けるよりも、1回舞台に立つだけで色々なことが吸収できる。いまは衣装やメイクは自己満足ではなくなりました。プロのメイクの方から“ともちゃん、そんな普段のお出かけみたいなメイクではダメだよ”って言われてから、がっつりと舞台メイクをするようになりましたね(笑)。
周りの方が、僕にアドバイスしてくれることを自分流にアレンジして取り入れていく。僕にとってコンサートは、ファンの方へのプレゼントだと思っています。観に来てくれたお客さんが喜んでくださることが、本当に嬉しい。その気持ちは今も変わらないです」