1990年代から、バラエティ番組を中心に大活躍してきた森口博子さん。現在もテレビやラジオのレギュラーを複数抱える人気者だ。歌手としても高く評価されており、「機動戦士ガンダム」シリーズ放送開始40周年となった2019年にリリースしたアルバム『GUNDAM SONGS COVERS』は第61回日本レコード大賞で企画賞を獲得。
 ’24年8月には、『想い出がいっぱい』やももいろクローバーZ百田夏菜子さんとコラボした『おジャ魔女カーニバル!! 』、TM NETWORKの木根尚登さんとのコラボ『STILL  LOVE HER(失われた風景)』などをカバー収録した『ANISON COVERS 2』をリリースするなど、精力的に歌手活動を行っている。
 そんな森口さんがデビューした’85年は、中山美穂さんや斉藤由貴さん、浅香唯さん、南野陽子さん、本田美奈子.さんなどが同期のアイドル全盛時代。当時は、アニソンが出自の彼女は「不遇な扱いを受けていたと感じていた」と振り返る。【第2回/全5回】

森口博子 撮影/有坂政晴

怒涛のアイドルラッシュ、80年代にデビュー

「80年代は、事務所がプッシュする新人は毎年1人と決まっていました。私の所属事務所では、典ちゃん(松本典子)が推される新人で、私はアニメのテーマソングが決まったことでイレギュラーにデビューしたところがあったんです。だから大人たちの扱いも、ほかのアイドルの皆さんとは違うなって、子どもながらに感じていましたね。
 同期の皆さんが、音楽番組でキラキラと輝きながら歌っているのを見ては、すごくうらやましく思っていましたね。“自分がほかのみんなと違うんだ”と、思った決定的な出来事は、さっぽろ雪まつりでした。イベント会場で歌わせていただけるのがすごく嬉しかったんですが、先にステージで歌った典ちゃんが歌い終わった途端、2000人近いお客さんは彼女について行っちゃったんです。無名の私の出番がきたときには、目の前のお客さんがガラガラで、ぽっかりと空いた空間に向かって歌いました。空しかったですね。はじめからお客さんがいないならまだしも、人気の差を見せつけられたみたいですごく傷つきました」