今の日本に生身で見せる、本当の意味のアクション・スターと呼べる存在はいない
今の映画界においてはアクションもどんどんCGで見せる傾向がありますよね。いつか俳優なんていらない時代が来るかもしれません。
私個人はやはりそういったものには反対で、古臭いかもしれないけど、生身のアクションを残していきたい。そうすると、おのずとその俳優の存在も残っていくでしょ。そのためには、裸になったときにインパクトがないと説得力がないとダメだと思う。昔、僕が出たドラマ『Gメン’75』(TBS系、75〜82年、倉田のレギュラーは75〜79年)の香港編で悪役を演った香港の俳優、ヤン・スエは体もデカくマッチョ。誰もが怖がる風貌だったけど、ああいうインパクトって必要だと思うんです。
残念ながら今の日本に生身で見せる、本当の意味のアクション・スターと呼べる存在はいない。だから、若い人たちはどんどん海外に飛び出して、日本ではできない経験をして自分を磨いてほしいですね。どんな体験でも必ず将来役に立ちます。そして、毅然とスッと立ってほしい。
今も健康で、こういう体に生んでくれた親には感謝しかないですよね。僕の父は武道家でしたが、父の教えで一番印象に残っているのは「倒れた人間は立ち上がるまで待て」ということ。倒れている相手は攻めない。つまりはフェアであれということ。それは言い換えれば「自分に自信を持て」ということでもあります。
こんな僕も、いつの間にか70代後半を迎えています。夢は、健康で動ける体をいつまでも維持すること。1週間体を動かさなかったら、怖い。毎日トレーニングをしています。脂っこいものや甘いものを控えるなど、食事にも気を使うようになりました。そもそも酒もタバコもやらないんです。面白くない男ですよね。
倉田保昭(くらた・やすあき)
1946年3月21日、茨城県出身。T172cm。日本大学芸術学部演劇科卒業後、東映撮影所研究生を経て、66年にテレビドラマ『丸出ダメ夫』(日本テレビ系)でデビュー。71年に香港に渡り、同年『続・拳撃 悪客』で海外デビューを果たした。映画『帰って来たドラゴン』で日本凱旋し、『闘え!ドラゴン』(東京12チャンネル)、『Gメン‘75』などに出演後も、『七福星』(85年)、『フィスト・オブ・レジェンド』(94年)など国際的に活躍を続ける。
映画『帰って来たドラゴン』
(2Kリマスター完全版)
倉田保昭、日本凱旋50周年記念。流浪の好漢・ドラゴン(ブルース・リャン)、格闘家ブラック・ジャガー(倉田)が秘宝の争奪戦を繰り広げる。同時上映:『夢物語』。配給:エデン
7月26日(金)より、東京・新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー