根っからの八王子気質、雑草魂をエネルギーに

 人気が絶頂を迎えれば、谷底に落ちるように人心が離れていくことが起こるのも、この世界の常。繊細な彼が、激しい浮き沈みを経験して心折れそうになりながらもなお、前に進めたのはなぜだろう?

「ファンモンという存在は偉大でした。グループの完成度が高すぎて、ソロではそれを超えられないという難しさを感じていました。なので、プロモーションに呼んでいただいても、“元ファンキーモンキーベイビーズのファンキー加藤と紹介してほしくない”とか、いま思うと恥ずかしいダダもこねましたね。
 そんなわがままを言ったのも、元はと言えば、僕がコンプレックスの塊だからだと思うんです。前向きなメッセージをずっと歌い届けてきましたが、いつも漠然と世界に対して“なにくそ”“こんちくしょう”みたいな気持ちがある。こじらせがひどくて、音楽番組やフェスでいろんな方と共演しても、皆さんが眩しくてしょうがないんですよ。どんなに若いアーティストさんでも、“めっちゃバズってるな。うやらましい! 負けるもんか”って思っちゃう。
 それって、おそらく八王子出身だからじゃないかなって思ってるんです。東京だけど渋谷とか新宿とかみたいに、おしゃれでもなければ、眠らない街でもない。八王子の住民は、普通に夜になれば寝ます(笑)。そんなカッコ付かない東京・八王子だけど、だからこそ出身者はきっと新宿や渋谷に負けてない、負けたくない気持ち……雑草魂みたいなものを、ずっと持ってるんです。いま僕は都心に住んでるけど、その八王子気質は抜けませんね。だから、いまも虎視眈々と世間を見返すチャンスを狙ってるんです」

ファンキー加藤 撮影/有坂政晴

ファンキー加藤
​1978年12⽉18⽇ 生まれ、東京都⼋王⼦市出身。’04年1⽉ 地元⼋王⼦でFUNKY MONKEY BABYSを結成し、リーダーを務める。’06年1⽉ 『そのまんま東へ』でメジャーデビュー。’09年より『NHK紅⽩歌合戦』に4年連続出場し国民的グループになるも、’13年6⽉に解散。’14年よりソロアーティストとして活動をスタートし、同年9⽉には⽇本武道館のステージに立った。ステージ上に酸素缶が欠かせないほど、熱量が高く、距離感の近いパフォーマンスでファンを捉えている。’16年には、映画『サブイボマスク』で初主演し、俳優業にも進出。ソロデビュー10周年となる’24年7月には、初のソロベストアルバム『My BEST』をリリース。9月からは全国10カ所を巡る「ファンキー加藤 10th Anniversary LIVE TOUR Your VOICE」を開催する。