1979年、NHK土曜ドラマ『男たちの旅路』シリーズ「車輪の一歩」でデビューし、NHK大河『草燃える』『銭形平次』(フジテレビ系)などに出演。1985年『必殺仕事人V』(テレビ朝日系)の組紐屋の竜役で大ブレイクを果たした京本政樹。ミュージシャンとしても活動するかたわら、幅広く活躍する彼の“THE CHANGE”に迫る。【第2回/全2回】

京本政樹 撮影/貴田茂和

 そうやって、役者の仕事も真剣にやりながら、音楽の仕事も諦めずに頑張っていたら、84年にはデビューアルバムの『ラブレーの15分』をリリースすることができました。全10曲、すべて僕の作詞作曲です。その後はベスト盤も含めて16枚、アルバムをリリースしてます。やっぱり、思い通りにいかないときでも、諦めないでいることが大事なんだなと思いましたね。

 役者としての転機も、ちょうどその頃です。今でもよく覚えていますが、ある日、大川先生からこんなことを言われました。

「『必殺』を見たことあるか?」

 ご存じ、藤田まことさん主演の『必殺仕事人』シリーズのことです。「これからの時代劇は、『銭形平次』のような分かりやすい勧善懲悪ではなく、『必殺』のような時代劇が流行る」

 たしかに見てみたらかっこいい。ちょうど僕が出演していた現代劇のアクションドラマ『京都マル秘指令 ザ新選組』の制作が朝日放送と松竹で、『必殺』と同じ方がプロデューサーだったご縁があったので、出してもらえないか相談してみたんです。

 でも、当時の『必殺』は中条きよしさんと三田村邦彦さんが人気絶頂で、僕の入る余地はありませんでした。ところが数か月後、このお二人が次回のシリーズから降板するということになったんです。

 そこで演じたのが、「組紐屋の竜」。クールでニヒルな殺し屋ですが、これが本当にハマりました。