ハマりすぎて、そのイメージが強くなってしまった

 ただ、ハマりすぎて、そのイメージが強くなってしまったんですよね。そんな中、90年代に入ってから喫茶店で偶然、脚本家の野島伸司さんと会ったんです。その場で「実は京本さんにピッタリ合う役があるんですよ」と言われたのが、TBSのドラマ『高校教師』の藤村知樹の役だったんです。

 ドラマは大ヒットしたのですが、一方で「あんな過激な役をよくやりましたね」と言われましたね。

 でも、僕にとっては、自分自身が「時代劇のヒーロー役から脱皮する」と、ものすごく前向きに挑戦した役だったので、やってよかったと思っています。

 8月8日から11日まで、銀座の博品館で、渡辺裕之さんが生前深く関わっていた『シーボルト父子伝〜蒼い目のサムライ〜受け継ぐ者達』で、“ナベさん”が演じていたシーボルト父を演じます。

 ナベさんとはデビュー当時から仲が良く、数々の映画・ドラマでの共演はもちろん、僕が作詞・作曲・プロデュースを担当した5人組の音楽ユニット『GARO Project』ではドラムを担当してくれたりと、まさに盟友と言えるような存在でした。

 時代劇出身の僕にとっては、なかなかハードルの高いストレートプレイで、最初はお断りしようかと思っていたのですが、ナベさんと撮影現場で同じ時間を共有した日々を思い出すにつれ、何の根拠もないのに「僕なりのシーボルトを精いっぱい演じてみよう」と決断しました。

 僕も今年で65歳になりました。人生経験を積んだ、味のある演技をこれからも追求し続けていきたい。そう考えています。

京本政樹(きょうもと まさき)
1959年1月21日、大阪府高槻市出身。79年、NHK土曜ドラマ『男たちの旅路』シリーズ「車輪の一歩」でデビュー。その後、NHK大河『草燃える』『銭形平次』(フジテレビ系)などに出演し、85年『必殺仕事人V』(テレビ朝日系)の組紐屋の竜役で大ブレイク。ミュージシャンとしても活動するかたわら、舞台、映画、バラエティ番組など幅広く活躍中。

『シーボルト父子伝~蒼い目のサムライ~受け継ぐ者達』
8月8日(木)~11日(日)
博品館劇場(東京・銀座8丁目)
総監修:木村ひさし
演出&脚本&主演:鳳惠弥
特別出演:京本政樹
江戸時代に訪日し、蘭学教育を行った医師・博物学者のフィリップ・フランツ・フォン・シーボルト(京本)と、その息子の外交官・ハインリッヒ(鳳)の物語。2022年に逝去した渡辺裕之が演じた役を、盟友の京本政樹が演じることも話題に。
https://twitter.com/siebold_fushi