登録者数29万人、動画再生数26万~100万回を誇るYoutubeの人気チャンネル「フェイクドキュメンタリーQ」(以下、Q)から生まれた「読むと死にます」ヨムシヌ本をご存じか? 同チャンネルで公開中の短編ホラー作品の中でも再生回数の多い6つの動画の後日談や新作エピソード2編が収録されているサイトと同名の書籍だ。
 フィクションを本物のドキュメンタリーのように演出する「モキュメンタリー」の手法を使って、「いわくつきの個人撮影映像」や「お蔵入りになったテレビ番組の取材映像」などを再編集したという設定の作品を公開しているのは、テレビドラマ『心霊マスターテープ』シリーズなどで知られる寺内康太郎監督ら4人の恐怖マイスターたち。
 そこで本サイトは、同チャンネルの熱狂的なファンだという「第5回女芸人No.1決定戦 THE W」で王者に輝いたお笑い芸人オダウエダの植田紫帆さんと、Qの寺内監督に対談を依頼。第3回目は、Qの映像を「考察」することによって生まれた、さらなる恐怖から、日常に潜む「考えると怖いこと」まで、存分に語り合っていただいた。
 では、猛暑を忘れる「真夏の夜の恐怖トークバトル」をご堪能あれ。ただ、くれぐれも「キムラヒサコと目を合わせないでください――。」

オダウエダ植田紫帆(左)と寺内康太郎監督。撮影/小島愛子

「書き込み“あそこのシーンに影が映っていた”で霧の中へ」

――植田さんから見て、Qと他のホラー作品とは、どこが違うと思いますか。
植田:たいていのホラーは、「現実にあってたまるか!」という設定なんですが、Qは「これほんとにあったやろ!?」というものが多くて、隠しリンクの話なんて実際に聞いたことあると思ってしまう。手触りがリアルだから、現実との境目が曖昧になるんです。
寺内:一見すれば普通だけど、よく見たら怖いっていうのは、日常の中にあるじゃないですか。

 たとえばエレベーターの前に花が置いてあったとして、気にしなければ普通ですが、よく考えたら気持ち悪かったりするわけです。気づくかどうかなので、そんなに難しいことじゃない。ちょっとした説明で怖くなりますよね。
 QはYoutubeではじめているので、大がかりなホラーというより、日常の中から怖いものを拾い上げていこうというスタートなんです。それがあるのかもしれませんね。
植田:Youtubeとはすごく相性がいいと思います。コメント欄には視聴者の考察がたくさん書き込まれているんですが、「あそこのシーンに影が映っていた」とか誰かが書くと、さらにそこから考察が広がって、視聴者が勝手に霧の中をさまよっているんです。
寺内: 植田さんは“考察班”ではないんですか?
植田:私は見るだけですね(笑)。でも考察を読むのは面白いですね。こんなとこで考察するんだ!! って。
寺内:たぶん「考察してくださいね」と作ったら、視聴者は考察してくれないんですよ。いろいろ考察されるというスタイルが自然に発生して、でも、そのおかげで作品が完結しているんだと思います。だから視聴者と一緒に作っているという意識はありますね。
植田:観客と一緒に作るというのは、お笑いライブにも共通するところですね。お客さんの空気感と合わせて、ひとつのステージが完成するのは一緒です。
 考えたら、そこが他のホラーとQの違うところかもしれませんね。他のホラーが映画やテレビ番組のような作品としたら、Qはお笑いと一緒のライブなんですよ。