「芸人の世界は酷かったと聞いています」

植田:人数が少ないからこそ、可能になることもあるんですね。
寺内:単に少ないだけでなく、全員に必要性がある少人数だからでしょう。意見がぶつかることもありますが、真剣に言い合えるのも信頼している同士だからです。
植田:ぶつかるんですね(笑)。
 大きな映画や番組だと、人数が多い分、現場を回さなくてはいけないので、監督さんのやりたいことが薄まりそうな気はします。
寺内:その日を無事に終わらせるのが監督の仕事になってしまうこともありますからね。自分のやりたいと思ったことを現場でやるのは、プロの世界でも難しいですよ。
植田:芸人なんて、2人とか3人の最小単位なのに、それが起こりますからね。番組や劇場の都合、自分たちのやりたいこと、コンビの間でも妥協して譲り合ったりしますから。
寺内:もちろん、人数がいたほうがマンパワーはあるので、いいものを作れたりもするんです。ただそれには、2年とか3年という、長い時間が必要なんですよ。
植田:コロナ以降から、映像のホラー作品の印象が変わった気がします。私としては刺さる作品が増えてきた。これも作り方の問題なんでしょうか。
寺内:確かに、若い人の意見が通りやすくなったのもこのあたりからですね。おかしいことは、おかしいと言える。昔は映像の世界も酷かったと聞きますから…。
植田:扱われ方も含めて、芸人の世界は、昔はかなり酷かったと聞いています(笑)。
そういえば、先日、テレビ東京の大森時生さん(テレビ東京プロデューサー、演出家)と対談したときも、「自由のきくメンバーで、少人数でやれる」ということはおっしゃっていました。それができることで、作品のクオリティとか、質が変わったのかもしれませんね。
寺内:人数とお金をかけて作るメジャーもあっていいと思うんです。それを批判しているわけでもない。いろんなやり方があるだけです。若手だって、たくさんの人を使う撮り方を覚えなくてはいけない。その両方です。
 そうした中で、Qは無駄のない最小限のメンバーだからこそできる作品づくりが功を奏しているんだと思います。
――お話がたいへん盛り上がっているところ、恐縮ではございますが、そろそろ終了のお時間です。最後に植田さんから、今後のQへの期待などあれば、お願いします。
植田:新しい試みとして、体感型というか、視聴者と直接のやり取りがあるものを作ってくれませんか。Qを観ている人たちの顔を直接見てみたい(笑)。
 これからも一人のファンとして、Qの新作に期待しています!
寺内:本日はどうもありがとうございました。

植田紫帆(うえだ しほ)
吉本興業所属のお笑い芸人。小田結希とお笑いコンビ「オダウエダ」を結成し、『第5回女芸人No.1決定戦 THE W』では王者に輝く。現在は『天才てれびくん』(NHK Eテレ)などにレギュラー出演中。

寺内康太郎(てらうち こうたろう)
映画監督、脚本家。Youtubeの人気チャンネル「フェイクドキュメンタリーQ」のメンバー。作品に『境界カメラ』シリーズ、『監死カメラ』シリーズ、『心霊マスターテープ』シリーズなど多数。「フェイクドキュメンタリーQ」から生まれた初の書籍『フェイクドキュメンタリーQ』(双葉社)は予約だけでアマゾン1位となり、現在、5万5000部の大ヒット中。気になる書籍の内容は、現在チャンネルで公開されている22本のうちで再生回数の多い6つの動画の後日談や、新作エピソード2編が収録。さらに、“恐怖音声”と“恐怖動画”を体験できる12の“恐怖注意QRコード”が付いた体験型のホラー本になっている。